5月20日に、南伊勢町伊勢路の県道719号伊勢路伊勢線沿いの池の上に垂れ下がるモリアオガエルの卵を発見した二見町在住の北井誠也さんが同24日深夜、オスとメスが産卵し泡を作るシーンの撮影に成功した。
北井さんは、20日にモリアオガエルの卵塊(らんかい)を発見後、21日・23日・24日の夜、カメラを持って産卵シーンの撮影を狙っていた。「『池ノ谷のモリアオガエル繁殖池』(多気郡大台町)では100個近く卵塊が見つかることがあるので、まだ産卵する可能性があると予測していた」と話す。
一日中雨が降り続き大雨洪水警報が出た23日、北井さんによると、昼間確認すると3個の卵塊が増えていた。19時ごろに産卵する可能性があるかも――と思い、夜になると再び現地にさらに3個の卵塊が増えていた。雨と風が激しく真っ暗の状況で5メートル先の卵の様子はまったくわからなかったが、カエルの鳴き声が大きくなり状況が違うと思い、ひたすらシャッターを切った。自宅に帰ってデジカメの画像を確認すると、その中に産卵するカエル3匹が写っていた。しかしながら葉っぱでカエルの輪郭がはっきりと見えなかったので悔しい思いをしていたという。
翌24日、再び夜に狙いを定めて撮影に向かった。この日は天気もよく三脚を立てて産卵を待ち構えていると22時ごろ、前日と同じように鳴き声が大きくなった。木の枝を探すと、大きなメスの背中にオスが乗ったモリアオガエル2匹を発見した。カメラのピントを合わせてシャッターを何度か切った。23時ごろには、ほかのオス4匹も参戦し白い泡が発生し始めた。24時近くまでシャッターを切り続けたが、フラッシュの電池がなくなってしまい、その後の撮影はできなくなってしまったという。
「メス1匹に対してオス5匹が群がり白い泡を作り産卵していた。1個の卵塊が出来上がるまでに約3時間がかかっていた。この広大な山で生活するというモリアオガエルが産卵時期になると山を下り、オスとメスがちゃんとめぐり合う。生物の種族維持のための営みがこの瞬間に起こっている。生命の誕生はまさに神秘的」と北井さん。「これまで池ノ谷のモリアオガエルを何度も見に行き、産卵シーンを撮るのが夢だった。今度はオタマジャクシになって水面に落ちる瞬間を撮りたい」とも。