女性が海に潜ってアワビなどを取る「海女」たちの交流を深める「海女サミット」が9月25日、志摩文化会館(志摩市志摩町和具)で開催され、韓国済州島と全国9地域から海女57人が一堂に集った。主催は、海の博物館(鳥羽市浦村町)などで作る海女サミット実行委員会。
昨年の鳥羽大会に引き続き今回で2回目の同サミットは、海女同士の交流を通して持続可能な自然環境保護についての議論や、「海女文化」の情報発信を目的に開催。韓国の済州島で海女長を務めるユン・ポッキさんや済州道立海女博物館館長のチャ・ヘギョンさんらも招き、韓国と日本の違いなどについても話し合われた。
地元和具中学校の生徒らの質問を受ける「教えて!海女さん」のコーナーでは、「海女になった理由は?」「どれくらいの深さの海にどれくらいの間潜っていられるか?」など質問に対して、「海が好きだから」「5~7メートルくらいの水深に1分近く潜る」などと丁寧に答えていた。「妊娠中も潜るのか?」と会場からの意外な質問に対して「産まれる前日まで潜っていた」と答えた海女に、会場全員が驚いていた。
チャさんの講演では、済州島には現在約5,000人の海女(ヘニョ)がいるが韓国でも日本と同様に後継者育成に苦慮し高齢化が進んでいる。行政の支援は積極的で「ヘニョ学校」の創設や、島の海女に対して医療費無料にするなどの政策も行われていること、ユネスコの「世界遺産無形文化財」の登録を目指していることなどが報告された。
千葉県南房総市白浜町から参加の鈴木直美さんは、もともと東京出身のグラフィックデザイナー、海が好きでサーフィンをしに千葉まで通っていたが、海女への憧れが強くなり、2年前に海岸近くに永住を決めた。「操業日数が天候などに影響されること、アワビの漁獲量や市場価格などが不安定なことから、まだまだみんなに海女業を(仕事としては)勧めることはできないが、何とかしなければという思いで『海女文化』を継承していきたい。現在83歳になるおばあちゃんが現役でがんばっているので、その歳までは最低でも続けていきたい(笑)」と話す。
同実行委員長の石原義剛さんは「海女サミットは、海女さんたちの思いがひとつになってできあがったもの。海女さんたちはとてもおおらかで、すぐに仲良くなってしまう。交流を重ね、絆を強め、確実に『海女文化』を基底とする輪が広がっている。世界遺産登録への道がまた一歩近づいた」と感想を漏らした。
海女の歴史は、日本列島では5千年前の縄文時代の中ごろにその痕跡があったと推測されている。伊勢志摩地方では3千年前、白浜遺跡(鳥羽市浦村)から大量のアワビの殻とアワビオコシと考えられる鹿の角が発掘されている。天平17(745)年の年号が記された木簡が平城宮跡から出土し、志摩国名錐(波切)からアワビが送られた記録がある。万葉集には多くの海女の歌が詠まれている。現在海女人口は、伊勢志摩地方では約1,000人、全国では約2,000人。
26日、海女たちは、海の博物館を見学後、答志島(鳥羽市答志町)でアワビの放流作業などを行う。
関連事業として「済州島の海女 写真展」が同日から、同会館と志摩市市役所の1階ロビーで開催された。10月25日まで。