伊勢うどんの魅力を再発見しようと「伊勢うどんシンポジウム」が2月23日、伊勢市生涯学習センター「いせトピア」(伊勢市黒瀬町)で開かれた。
伊勢うどんは、太くて柔らかくモチモチの太麺に、昆布やカツオ、煮干しなどでとったダシと甘辛くて色の濃いたまりしょうゆを合わせた黒いたれをかけて刻みネギなどをトッピングして食べる伊勢地方に伝わる郷土料理で、江戸時代には伊勢神宮への参拝客に出されていたと伝わるが、正確な由来・発祥は分かっていない。2007(平成19)年に農林水産省選定「農山漁村の郷土料理百選」に選ばれた。
現在伊勢市は、伊勢うどんを地域の文化資源と再認識し、さらなる振興と継承に取り組み、国の登録無形民俗文化財への登録を目指している。
同シンポジウムでは、伊勢うどん友の会会長で伊勢うどん大使を務めるコラムニストの石原壮一郎さんが「伊勢うどん全国制覇への道」と題して講演。その後、三重大学名誉教授の成田美代さんがコーディネーターを務め、石原さんのほか、三重県製麺協同組合理事長の堀哲次さん、皇學館大学文学部国史学科助教の谷戸佑紀さん、三重県総合博物館学芸員の門口実代さん、伊勢市長の鈴木健一さんによるパネルディスカッション「伊勢うどんの魅力に迫る」が開かれた。
石原さんは「伊勢うどん全国制覇への道は地元の力強い後押し、登録無形民俗文化財登録、名産のうどんを持つ地域との横のつながりの強化が重要」と力説。パネルディスカッションでは鈴木市長に「伊勢のまちを伊勢うどんの聖地にするために『伊勢うどんランド』を作ってほしい」と提案した。
伊勢うどんの起源について過去に調査したことがあるという伊勢神宮広報課長の音羽悟さんもシンポジウムに一般参加。音羽さんは「文献上では1761年に加藤忠告の書いた『宮川夜話草』に土産として記述があるので江戸中期の250年以上前から参宮者に出されていたと推測できる。それ以外の文献を調べても出てこないので諦めていたが本居宣長の門人で酒垂直神社12代宮司の加藤吉彦が1797年に書いた日記『千尋の浜草』に外宮近くの山口元右衛門久貞の家で『名だたる饂飩(うどん)』の記述を見つけた。参宮者だけでなく伊勢の人が家庭でも食べていたのだとわかる」と説明する。
伊勢市長は「以前市役所の近くにあった店のカレーうどんが大好物だった。ネットで見るとカルボナーラ風とかトッポギ風とか色々なバリエーションで食べている人がいる。全国制覇の次は世界制覇を目指して取り組みたい」、堀さんは「おいしい伊勢うどんを作り続けていけるように頑張りたい」、門口さんは「離乳食に伊勢うどんを食べさせたりしていることを全国に発信できれば」とそれぞれ発言した。