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巨大地震発生でも途切れない通信インフラの裏側、通信事業者の見えない努力

巨大地震発生でも途切れない通信インフラの裏側、通信事業者の見えない努力。NTTComの光海底ケーブル志摩陸揚局舎

巨大地震発生でも途切れない通信インフラの裏側、通信事業者の見えない努力。NTTComの光海底ケーブル志摩陸揚局舎

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 インターネットが世界とつながる国内の通信インフラは、東日本大震災発生後も当たり前のように接続されている。そこには志摩市の海岸に陸揚げされている光海底ケーブルも大いに関係しているようだ。

光海底ケーブルは志摩市阿児町の国府海岸に陸揚されている

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 東日本大震災の影響でさまざまなインフラが寸断された。電力インフラとなる原子力発電所の被害はいまだ予断を許さない状況、被災地域以外にも計画停電を実施せざるを得ないほど国内電力の供給力が大きく低下した。

 被災地における通信インフラの復旧にはまだまだ時間を要するようだが、今のところ日本国内のインターネット接続環境には大きな問題は発生していない。むしろ地震発生後、インターネットのトラフィック量は相当数増加しているにもかかわらず、インターネット通信環境は強じんなままだ。ユーストリームやユーチューブなどの動画サイトへは被災地の状況を把握するために、ツイッター、フェイスブックなどのSNSからは情報収集のほか支援のネットワークをつなごうとどんどんコミュニティーが生成され、その思いの連鎖は全世界に広がっている。「何かできないか?」とさまざまな利他の気持ちがインターネットのアクセス数にも反映している。

 志摩市阿児町の海岸には、1999年から運用のKDDI所有の陸揚局JIH(ジャパンインフォメーションハイウエー)がある。JIHは、国内通信の基幹インフラであると同時に、国際海底ケーブルとの相互接続ポイントの役割を担い全国17の陸揚局を中継し日本列島を2重のループで1周する。そのほか同海岸には、アメリカやオーストラリア、アジアにつながる海底ケーブルが数本陸揚げされ、「光海底ケーブル銀座」とも呼ばれるほどの集積地となっている。千葉県千倉市、南房総市、茨城県ひたちなか市、北茨城市も同様の集積地になっている。

 その関東方面の陸揚局の一部と海底ケーブルが今回の津波で被害を受け機能しなくなったという。KDDIの広報室は「今回の地震で陸揚局舎も被害を受けた。しかしながら、迂回(うかい)ルートで通信環境を維持した。今は被災者のライフラインとしての通信インフラの早期復旧に向け、全社を挙げ最優先に取り組んでいる」と話す。NTTコミュニケーションズ(NTTCom)広報室は「当社の陸揚局舎は直接的な被害は受けなかったが一時的停電が発生したため、北茨城局で非常用電源に切り替え対応した。現在は正常に稼働している。停電中であっても無停電電源装置および発電用エンジンを装備し対応している」と説明する。

 アメリカ経由の国際線について太平洋を横断するルートは「志摩市-ひたちなか市-ワシントン州-カリフォルニア州」の4カ所、「志摩市-南房総市-北茨城市-ニューハンプシャー州-カリフォルニア州-ハワイ州」の6カ所を経由、どこかが切断されても右ルート左ルートと切り分け運用できるように設計。さらにそれでもサービスが維持できない事態を想定し、他の企業の持つ海底ケーブルと接続しあうルール作りで連携し2重、3重、4重…とルーティングを変え緊急時に対応している。今回の地震で志摩局も迂回ルートとしての役割を大いに担った。

 2006年12月26日に台湾南部で発生したマグニチュード7.1の地震では、多くの海底のケーブルが切断され複数の通信事業者がサービス停止を余儀なくされた。しかしながら今回の地震では国内の通信事業者は被害を受けた事業者も早期に復旧しサービスを維持している。NTTComは台湾沖地震での教訓をもとに「Asia Submarine-cable Express(ASE)」の建設を開始したと1月31日に発表したばかり。

 1995年1月17日の阪神淡路大震災発生時、インターネットは学術研究者らが使用する程度だったが、現在ではインターネットはなくてはならないライフラインの一つとなった。阪神淡路大震災の時には情報収集にテレビ、ラジオ、パソコン通信などを活用したがタイムリーな情報が得られなかったため、テレビでその避難所に何が足りないと報道されるとその物が集中し、ほかの避難所に届けられない事態が何度も発生し問題となった。

 インターネットインフラのバックボーンは、10年前と比較すると100倍以上になった。今インターネットがつながらなくなると情報が流れなくなり、食料や物資がなく困っている被災者にすぐに届けられるものでも届けられなくなるかもしれない。人命にかかわる緊急を要する情報がストップしてしまうかもしれない。「当社は『通信会社として社会のライフラインを担っている』という責任を持ち、電話、インターネット、企業向けデータ通信サービスをはじめ被災した通信サービスの復旧を最優先に取り組んでいる。今後も全力を尽くす」(NTTCom)と力強い。

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