時折近鉄特急が走る線路沿いの志摩市磯部町を流れる磯部川の下流の汽水域で現在、春の風物詩の「シロウオ漁」が盛んに行われている。
シロウオ(素魚)とは、ハゼ科の半透明な魚で体長4~5センチ。2月の中旬~4月上旬までの春先に海から産卵のため満潮時に川を遡上(そじょう)する。漁法は、「四つ手網」と呼ばれる約2メートル四方の網を川底に沈め、シロウオがその上を通ったときにすくい上げる。調理方法は「おどり食い」「天ぷら」「卵とじ」「吸い物」など。熱を通すと白くなる。よく似た名前のシラウオ(白魚)はサケ科の魚で、同じ春を告げる魚ではあるが別のもの。
磯部川の上流(源流)は、神話「岩戸伝説」にも登場する「天の岩戸」の穴から流れくる。磯部川沿いに立つうなぎ店「川うめ」(同)の先々代が、真珠王・御木本幸吉翁のためにこの川で取った天然のウナギをかば焼きにして出した逸話が残る。川沿いの桜並木が花をつけるころまでシロウオ漁は続けられる。
シロウオ漁をする漁師は「年々シロウオは少なくなっている。以前は2升ほど取ったが今では2合取るのがやっと」だという。
志摩市内では、伊勢神宮の別宮「伊雑宮(いぞうぐう・いざわのみや)」の前を流れる野川(磯部町)や池田川(同)、桧山路(ひやまじ)川(浜島町)、鳥羽市では河内川(千賀町)、南伊勢町では神津佐(こんさ)川(神津佐)などの河口で見ることができる。