関西エリアのサーフィンポイントとして知られる志摩市阿児町国府浜(こうのはま)と同町志島の市後浜(いちごはま)で7月29日、東海・東南海・南海地震による津波災害を想定した大規模な津波避難訓練が開催された。
今回で7回を数える避難訓練だが、昨年は東日本大震災が起こった年でもあったため鈴木英敬三重県知事も視察に駆けつけた。主催は、国府・甲賀・志島自治会や観光協会、駐車場組合、漁協、地元サーフショップ、宿泊施設、志摩パークゴルフ場らで組織する「志摩コーストガーディアンズ」(2006年6月設立)。設立当初より、三重大学の建築構造学・地震防災が専門の川口淳准教授をアドバイザーに迎え、志摩市総務部地域防災室と連携を取りながらさまざまな取り組みを実践してきた。
これまでの避難訓練では、海岸から堤防の中までの訓練が主だったが、昨年から避難場所の確認とさらなる防災意識向上を目指し、一時避難場所や近くの高台まで実際に移動する本格的なものになった。さらに、昨年の想定マグニチュード8.7に対して今年は9.0に変更し、さまざまなシミュレーションを行った。
志島地区では、大きなサイレンが海岸に鳴り響くと真っ先に地元ベテランサーファーらが丘に上がり、指示どおりに一時避難場所へ移動した。しかしながら一般の海水浴客や初心者サーファーらは戸惑った様子で、当初は参加しようとしていなかったが、周囲の様子を見て堤防の上に上がっていった。各駐車場関係者は駐車場名を書いたプラカードを持ち、真っ先に一時避難場所で待機し、それぞれの駐車場単位で避難者の人員把握を行った。
訓練本部席が設置された国府海岸では、地元選出の国会議員、県会議員の姿もあり地域住民とサーファーらが中心となって行う避難訓練を真剣な眼差しで見守った。この日訓練に参加した人は1608人でそのうち一時避難場所まで避難した人は856人だった。三重大学からも学生ら6人が参加し、実際の訓練の様子を客観視しながらデータ化し調査を行った。
今年8月22日~26日には日本サーフィン連盟(NSA)主催の「第47回全日本サーフィン選手権大会」が国府海岸で開催される。NSA三重支部顧問を務め三重県議会議員で地元志摩市出身の中嶋年規さんは「毎回この津波避難訓練では地元サーファーが率先して避難誘導を行い、自分たちで地域を守ろうとしている姿に、地域防災のあるべき姿をみる」と賞賛する。「全日本サーフィン選手権大会の開催がさらなる地域の発展につながっていくと確信する」とも。