近畿日本鉄道(大阪市天王寺区、以下近鉄)の新型観光特急「しまかぜ」が3月21日、近鉄名古屋駅と大阪難波駅をそれぞれ10時25分と10時40分に出発、伊勢志摩の透き通る快晴の空の下を「志摩の風」を受けながらさっそうと駆け抜けた。賢島駅(志摩市阿児町)にそれぞれ定刻の12時26分、12時59分に到着した。
「しまかぜ」は、6両編成の列車(全138席)で、同社が今年10月の伊勢神宮式年遷宮に合わせ、伊勢志摩地域活性化の起爆剤として導入。大阪難波駅~賢島駅間(停車駅=大阪上本町、鶴橋、大和八木、伊勢市、宇治山田、鳥羽、鵜方)を約2時間20分、近鉄名古屋駅~賢島駅間(停車駅=近鉄四日市、伊勢市、宇治山田、鳥羽、鵜方)を約2時間で結び、それぞれ1日1往復する(水曜運休)。
伊勢市駅には「はなてらすちゃん」、鳥羽駅には「トーバ」と「トパティ」、賢島駅には「あおサ~」と「はまちゃん」など、この日は各市のゆるキャラも駅のホームで待ち構え乗車客を歓迎した。沿線では市の職員や住民ら1000人以上が、のぼりや横断幕を手に「しまかぜ」のデビューを共に祝福した。
名古屋発の一番列車最前列のシートに乗車した名古屋市在住の鵜飼慧(あきら)さんは「2月21日の初日発売日に名古屋駅正面改札窓口前に朝5時から並んで最前列シートの予約を取った。とにかく素晴らしかった」と興奮する。「和風個室」を家族で利用した松阪市在住の森川泰光さんは「アーバンライナーがデビューした初日は独身だったこともあり一人で乗車したが、今回は息子たちと一緒に4人で個室を楽しんだ。『しまかぜ弁当』やプレミアムアイスクリーム(抹茶)を注文しアテンダントさんに運んでもらったのでとても快適だった」と笑みを浮かべる。
生後8カ月で化膿(かのう)性髄膜炎を患い四肢まひとなり37年間車いす生活を送る金岡耕祐さんと母の貴子さんは「車いすでも乗車できる『しまかぜ』のデビューを心待ちにしていた。経管栄養でしか食事を取れない息子でも、快適に旅行をすることができて、とにかく感動した。素晴らしい。車いすで外に出ることができないと思って諦めている人にどんどん紹介したい」と感想を漏らした。
「しまかぜ」の予約は1カ月前から受け付け、4月7日までと土曜・日曜についてはほぼ完売、平日や上り列車についてはまだ若干の空きがあるという。