志摩マリンランド(志摩市阿児町神明、TEL 0599-43-1225)の巨大回遊水槽の中で泳ぐ魚の間で「和文字の入れ墨」が流行している。
巨大回遊水槽はドーナツ型で、深さ2.5メートル、奥行き3メートル、周囲38メートル、水量約300トン。タイやブリ、カンパチなど約50種、約2000尾の魚が泳ぐ。魚は1周30~60秒かけ右回りに泳ぎ、毎時1時間おきの「海女の餌付けショー」は、白い磯着姿の海女が食事を運んでくれる魚の最も楽しみな時間となっている。
魚の間で「和文字の入れ墨」が流行していると言う事実を確認しようと、水槽で泳ぐ長老のマダイに話を聞くと、ある日1匹のカンパチが「寿」と和文字の入れ墨を入れてきたという。たまたま客がその入れ墨を見つけて、テレビのバラエティー番組「探偵!ナイトスクープ」(朝日放送)に投書すると、タレントの桂小枝探偵がやって来て面白おかしく撮影して帰っていった。番組が放映されると一気にブレークし、人間たちは「寿カンパチ」「幸運を招く」などとありがたがり、同館飼育員たちも派手なポスターを作ってPRし始めるなど、「寿カンパチ」はいきなりスターダムにのし上がっていったというのだ。
それを見ていたほかのカンパチやブリたちも入れ墨を入れようと、水槽の底や岩肌で自分のウロコをこすり出したという。中にはうまく字が彫れたものもいたが、左側のウロコに入れたため、水の流れが左回りにならない限り一生客の目に触れない大失態を犯してしまうものや、傷つけすぎて赤くただれてしまって後悔するものもいるという。
長老マダイによると、「当分の間はスターの座を奪い合うために、文字を入れようと体をこする若い魚の流行は収まらないのでは」と推測する。さらに、「きれいな体が一番美しいことに早く気付いてほしい」と苦言を呈する一方、「これまで『寿』といえばわれわれマダイのこと、おめでたい席には欠かせない不動の地位を築いていたのに、マダイの若い連中はみんなすねてしまって、回遊もせずたむろするだけになってしまった。何とかマダイたちに活を入れてやりたい」と心配する。
「いなせなブリ」が現れるか?「めでたいマダイ」が赤く染まって「フライングゲット」を踊りまくるかは、まだ誰にもわからない。