風の神様に適当な風が吹き、適当な雨が降るよう祈願する「風日祈祭(かざひのみさい)」が8月4日、伊勢神宮外宮(げくう)の「風宮(かぜのみや)」と内宮(ないくう)の「風日祈宮(かざひのみのみや)」を中心に125社全てで行われた。
5月14日に執り行われる同祭では、稲作が始まったばかりの時期のため125社に雨風を凌(しの)ぐ「蓑(みの)、笠(かさ)」をまつるが、8月の同祭では稲も実り、順調に生育し収穫を残すのみとなっていることから蓑・笠はまつらず、台風の直撃など風雨による災害がないように、「悪風(あしきかぜ)荒水(あらきみず)に相(あ)はせ給(たま)わず」と祝詞を奏上する。5月と8月は共に稲の成熟に重要な時期のため、適当な雨と風に恵まれ五穀豊穣(ほうじょう)を祈る。
両宮の祭神は、共にイザナギとイザナミの間に生まれた神とされる級長津彦命(しなつひこのみこと)、級長戸辺命(しなとべのみこと)。農耕に欠かせない風の神として知られ、鎌倉時代、元寇(1274年文永の役、1281年弘安の役)の時に神風を吹かせ国難を救ったとされ、1293年に別宮に昇格した。東日本大震災発生時、福島第一原子力発電所からの放射能が、風向きいかんで人々への影響があることから多くの人が風の神様への祈りをささげた。
伊勢志摩地方の水田は現在、青いじゅうたんを敷いたように美しく、風がそよぐ度に青々と育った稲がしなやかに揺れている。志摩市浜島の岡野幸吉さんは7月28日早々に稲刈りを行い、この地方の風習で盆の供え用に間に合うように収穫した。本格的な稲刈りは盆明けになる。