二見・興玉神社(伊勢市二見町)の飛び地にある摂社「栄野神社」(同)で1月14日、煮えたぎる湯を氏子たちに掛ける例祭「湯立(ゆたて)神事」が行われた。
氏子たちが早朝から同地区にある井戸よりくみ上げた水に無垢(むく)塩草を入れはらい清め、まきで火をたき大釜でグツグツと煮立てる。束ねたクマザサを神職らが沸騰した湯の中に入れ、勢いよく左右左に振り上げる。
「煮えたぎる 湯玉の露を自らに 受けて清めよ 身の禍事(まがごと)を」と和歌に合わせて巫女(みこ)がクマザサを振る「湯立舞」は全方位に湯が掛かるように大釜の周りをぐるりと2周回る。巫女が振ったクマザサからは、弧を描いた白い湯気とともに熱湯の露が境内全体に飛び散った。氏子たちは軽く頭を垂れ、その露を全身で受け無病息災を祈っていた。
最前列で熱湯を浴びた人はその熱さで顔が一瞬こわばるが、耐えながらじっとしていた。今年初めて参加したという伊勢市在住で今年80歳になる女性は「とても熱かったが、これでご利益を頂ける。ありがたい」と笑顔で満足そう。
新年早々から行われる同神事は、約200年前から伝わるというがそれを伝える文献は災害などで喪失し残っていない。湯玉を浴びることで無病息災がかなうという。神事で使ったクマザサは神事の後、みんなに配られ家の神棚に供えられる。