日本に3カ所しかないという円形の水田「長谷(はせ)の車田(くるまだ)」(多気郡多気町長谷)で9月13日、「収穫祭」が行われた。
世帯数13、人口約40人の集落・長谷地区で活動する地域おこしグループ「一八会(いちはちかい)」(同)によって執り行われる同祭。車田には、今年5月11日「御田植祭」でみんなで手植えで植えたもち米の「カグラモチ」がすくすく育ち、黄色く色を変え穂を垂れた状態でまん丸の形がかたどられていた。
車田は、半径11メートルで面積約3.8アール。同祭は1998年に、同会代表の逵(つじ)昭夫さん所有の水田3枚を併合しまん丸の車田に変えてから、稲作文化継承などを目的に毎年行っている。半径の11メートルは、仁和元(885)年に光孝天皇の勅願所として建立された真言宗山階派の「近長谷寺(きんちょうこくじ)」(同)の本尊「十一面観音立像」の「11」にちなんだ。車田は、全国でこの長谷と新潟県佐渡市と岐阜県高山市の3カ所に残るだけとなっている。
秋晴れの青空が広がったこの日、最初に逵さんが車田の周囲に、多気町にある酒蔵「河武醸造」(五桂)で作られた御神酒(おみき)の「鉾杉(ほこすぎ)」で場を清めると、日本酒の甘い香りが風とともに周囲を包み込んだ。空には無数の赤トンボが飛んでいた。同会のメンバーと佐奈小学校の児童ら約20人が手刈りの稲刈り作業を開始すると、刈り取られた稲は一旦地面に放射状に置かれ、全ての稲が刈り取られると、車田に大きな花が咲いたような幾何学模様が現れた。
車田の中心部の稲穂は、初穂として伊勢神宮に奉納し、収穫した米は、日本神話の「天の岩戸伝説」にも登場する力持ちの神様「アメノタヂカラオ」を祭る「佐那神社」(仁田)と「近長谷寺」に奉納する。毎年約150キロを収穫する。