20年に一度の式年遷宮が執り行われている伊勢神宮の内宮(ないくう)入り口に立つ2つの大鳥居が10月3日、20年ぶりに新しく建て替えられた。鳥居と宇治橋の正面にちょうど太陽が昇る時刻に作業が始まり約10分間で鳥居が完成した。
伊勢神宮内宮宇治橋前の大鳥居完成までの一部始終【連続写真あり】
9月29日から工事が始まりこの日、外側の大鳥居の最上部に当たる笠木(かさぎ)がクレーンで取り付けられ完成した。完成式では鳥居のお祓いが行われた後、鷹司尚武大宮司ら神職のほか関係者約100人が「くぐり始め」を行った。
大鳥居は五十鈴川に架かる宇治橋の両端にそれぞれ立ち、その柱は宇治橋の内(東)側が内宮の、外(西)側が外宮(げくう)の、旧正殿の屋根を20年間支えてきた棟持柱(むなもちばしら)が再利用されている。棟持柱は、伊勢神宮の全社殿の中で最も太い。
鳥居の高さは約7.44メートル、柱の最も太いところの直径は約70センチ、総重量約5トン(柱=約1.5トン×2、笠木=約1.5トン、ほか=0.5トン)。鳥居の柱は、棟持柱として加工された時の直径が約75センチなので、柱の周囲を約2.5センチほどヒノキの美しい白肌が見えるまで削った。
棟持柱として加工されてから大鳥居となって合計40年経過した古い鳥居は、今度は内側が伊勢別街道と東海道の分岐点となって栄えた「関宿の追分」(亀山市)に、外側が江戸時代に伊勢国への玄関口としてにぎわった「七里の渡し場跡」(桑名市)にそれぞれ、再び鳥居として20年間再利用される。
「関宿の追分」「七里の渡し場跡」で活躍している鳥居の次回の再利用先をそれぞれの担当者に確認すると「まだ決定していない」という。ちなみに20年前は、「関宿の追分」が阪神・淡路大震災で被災した生田神社(兵庫県神戸市)の正面の鳥居に、「七里の渡し場跡」が同じく被災した長田神社(同)の用材に使用された。
「なぜ、遷宮後すぐ新しい鳥居ができないか?」「なぜ、1年後になってしまうのか?」――その答えは、「内宮・外宮の旧正殿の解体作業が終わってからでないと棟持柱の加工ができないため」「内宮・外宮の旧正殿の棟持柱を再利用しているため」が正解だ。