「雪中花」ともいうスイセンの花が伊勢志摩地方でかれんに咲く、雪が舞いまだまだ寒さ厳しい2月17日、今年の五穀豊穣(ほうじょう)を祈る祭典「祈年祭」が、伊勢神宮の外宮(げくう)と内宮(ないくう)で執り行われた。
地球の周りを何度も回る気象衛星を打ち上げることなど想像できない時代、科学の力が及ばない時代は、ほんの数百年前のこと。当時は人間の五感を信じ、第六感を高め、神に全てを委ねてきた。今では、当たり前のように正確に天気を予測することができるどころか数時間、数分後の集中豪雨まで的中させる。どれほどの科学の進歩があっても、豊作できるようにと、人々が飢えることなく平和で過ごせるようにと、今も変わらぬ祈りを続けているのが伊勢神宮。同祭の別名は「としごいのまつり」。
神饌(しんせん)を奉納し五穀豊穣を祈願する「大御饌(みけ)の儀」と、皇室より送られた「幣帛(へいはく)」を奉納する「奉幣(ほうへい)の儀」が、外宮ではまだ真っ暗な早朝の4時と7時から、内宮では11時と14時から、それぞれ執り行われた。同祭は、皇居と全国の各神社でも執り行われる。
内宮での「奉幣の儀」は、幣帛を入れた唐櫃と勅使が先頭を歩き、その後を白衣・緋袴(ひばかま)・小袿(こうちぎ)といった平安の装束を着た池田厚子神宮祭主が続き、鷹司尚武大宮司、高城治延少宮司ら神職が列を成し、小雨降る中を傘を指しながら玉砂利を踏みしめ正宮まで歩くその様子は、平安時代にタイムスリップしたかのようだ。
伊勢神宮では、10月の神嘗祭(かんなめさい)、6月・12月の月次祭(つきなみさい)を「三節祭」、それに2月の祈年祭(きねんさい)と「勤労感謝の日」に当たる11月の新嘗祭を加え「五大祭」と呼ぶ。
同祭は、23日まで伊勢神宮125社で行われる。