平安後期885年創建と伝わる「近長谷寺(きんちょうこくじ)」(多気郡多気町)で2月18日、家内安全や無病息災などを祈願する「春季厄除(やくよけ)大会式」が行われた。
真言宗山階派の同寺には国の重要文化財の指定を受ける像高6.6メートルの「木造十一面観音立像」があり、「仏像マニア」も訪れる。伊勢の豪族「飯高宿禰(すくね)諸氏」が、第58代光孝天皇の勅願所として建立。奈良の長谷寺、鎌倉の長谷寺とともに「日本三観音」の一つとして知られ、全国に200カ寺以上あるといわれる大和長谷型観音に属するものの中でも右手に錫杖を添える姿は日本唯一。
87歳になるという腰が曲がった女性は十一面観音立像を一目見ようと、正面を向くこともできないほどの急な坂道を両手につえを持ちながら懸命に登っていた。この日、境内には多くの参拝者が詰め掛け、日本修験道会による柴燈(さいとう)護摩や火渡り護摩、厄払いの餅投げなどが行われた。
多気郡多気町の長谷と、神坂という山あいの狭い地域に立つ「普賢寺(ふげんじ)」「金剛座寺(こんごうざじ)」と同寺はどれも1000年以上の古い歴史を持つ。地元の人たちは親しみを込めて「多気のチベット」と呼んでいる。
「木造十一面観音立像」は毎月18日と日曜・祭日限定で、希望者だけに開帳している。拝観は10時ごろ~15時ごろ。拝観料は200円。