関西エリアのサーフィンスポットとして知られる志摩市の国府浜(こうのはま)で5月17日、アカウミガメの産卵が観察された。
今年県内初となるアカウミガメの産卵シーンに立ち会い、撮影に成功したのは、約20年前に大阪から移住し同海岸近くに住む湊庄一さん。湊さんは毎朝、自宅から同浜までをウオーキングするのが日課で、この日も日の出時刻(4時50分)前には海岸に到着していたという。
湊さんは「写真を撮り始めたのが4時59分で、その時には卵に砂を掛けようとしている所だった。撮影を終えたのが5時35分。(アカウミガメが)最後まで海に帰るのを見守った。例年なら、産卵を終えたウミガメが砂浜に残した行きと帰りの2本の足跡を見るだけなのに、今回は産卵中に出くわしとても驚いた。母ガメに出会うのも初めて。写真と動画を撮影した」と話す。
伊勢志摩地域の野生動物の保護・観察・調査などを行う志摩半島野生動物研究会(志摩町)会長で鳥羽水族館飼育担当の若林郁夫さんは「三重県内でのアカウミガメ上陸ケースとしては、今年初になると思う。県内では南は太平洋に面した紀宝町や熊野市、北は伊勢湾奥の四日市市や川越町の海岸にまで達するが、中でも志摩半島への上陸が最も多い。2012年には約150匹が上陸したが昨年は34匹に減少した。これは周期的なもので、全体の数が減ったというよりは増加傾向にあると思う。今年は産卵ラッシュになる可能性もある」と話す。
若林さんは「夜が明けても頑張る母ガメの産卵シーンに出くわすのは、大変貴重な体験。ウミガメが安心して産卵できる環境をいつまでも維持してほしい」と目を細める。