日本にとどまらずアジアを中心に世界にまで広がっている「ビブリオバトル(Bibliobattle)」の仕組みを考え普及させようと全国組織で動く「ビブリオバトル普及委員会」の新代表に、皇学館大学(伊勢市神田久志本町)の岡野裕行さんが就任した。
【その他の画像】ビブリオバトル関連書籍。岡野さんも一部を執筆した「ビブリオバトルハンドブック」も
6月28日、立命館大学びわこ・くさつキャンパス(滋賀県草津市)で開かれた第5回同委員会通常総会において決定。同委員会は代表と副代表を含む6人の理事と監査役と委員、事務局で構成。委員は全国に266人(2015年4月現在)。
岡野さんは、茨城県出身で図書館情報学研究者。2011年4月から同大文学部国文学科に赴任し、現在准教授。同年11月から同大のゼミや授業でビブリオバトルを実施。2012年7月に同大学生たちが立ち上げたサークル「ビブロフィリア」顧問。2012年11月の「Library of the Year 2012」でビブリオバトルが大賞を受賞した時のプレゼンターを務めた。
「ビブリオバトル」とは、小学生から大人まで誰でもできるゲーム感覚を取り入れた新しいスタイルの「書評合戦」「本を紹介するコミュニケーションゲーム」で日本が発祥。キャッチコピーは「人を通して本を知る、本を通して人を知る」。
2007年に京都大学情報学研究科共生システム論研究室の谷口忠大(ただひろ)さんによって考案され、2008年に谷口さんが立命館大学に移ると研究室の有志らによって運営が続けられ、全国の大学に広がった。2010年にビブリオバトル普及委員会が発足(初代代表は谷口さん)。同年から大学生・大学院生を対象にした全国大会「全国大学ビブリオバトル~首都決戦~」が開催され、今年は12月23日に第5回大会が、よみうり大手町ホール(東京都千代田区)で開かれる。
ルールは、ビブリオバトラー(発表者)がお気に入りの本を持ち寄り、スライドやレジュメなど一切使わず、自分の言葉で5分間のプレゼンテーションを行い本の面白さを伝える。その後2~3分間の質疑応答を受け、本の内容や発表者の思いについて理解を深める。会場にいるバトラー、観客全員で「読んでみたくなった本」を基準に多数決し、一番読みたくなった本「チャンプ本」を決定する。
岡野さんは「ビブリオバトルは、正しいルールで実施し、楽しさを体験してもらうことを意識している。結果的に読書につながればいいな、というような緩い感じで、あくまでも人と人とが仲良くなるための『コミュニティーづくり』『コミュニケーションの機会』のツール」と説明する。
「メディアなどで全国大会だけがクローズアップされると、イメージとして大上段に構え『難しいもの』になってしまうのが心配。今や街角の小さなカフェやさまざまな場所でも頻繁に開催されている。本の紹介を通してその人の人となりを知ることができるのがビブリオバトル。多くの人に気軽に実践していただきたい」と岡野さん。