志摩の太平洋沖で11日4日早朝、太陽が水平線から出た時の形がダルマに見える「ダルマ朝日」と大型貨物船が重なり、玩具の「だるま落とし」のようになる光景がみられた。
大気と海面の温度差によって海面近くの大気の層がレンズの役割をして屈折し、もう一つの太陽が映る自然現象によるもの。
太陽の形がダルマの形のように見えることからダルマ朝日(太陽)と呼ばれるほか、Ω(オメガ)の形に似ていることから「オメガサン」、伊勢志摩地方では真珠を作るアコヤ貝の形のようにも見えることから「アコヤ太陽」とも呼ばれる。
観測機会は、温度差が少ない夏場にはほとんど見ることができないが、寒くなる冬場に増える。雨や曇りの日、晴れていても水平線付近に雲がある時など当日の気象条件が悪ければ観測できない。ダルマ朝日はなかなか見ることができないため、「見ると幸せになれる」と言われている。ダルマ朝日を撮影しようと現地に何度も通う風景写真カメラマンも多い。。
この日、「だるま落とし」写真の撮影に成功したのは、今年3月に大きなリンゴ形の朝日を撮影し話題を集めた志摩市阿児町志島在住・志島小学校(志摩市阿児町)教頭の向井正明さん。当日早朝は肌寒く、直線距離で200キロ以上離れた富士山も薄っすらと観測することができたという。向井さんは自宅の前から撮影した。
向井さんは「家族みんなが朝日を見ていてダルマ朝日を期待していたら、大きな貨物船が進んできて『あ―邪魔される』と思って見ていた。どうやらダルマの形の朝日が船と重なって見ることができないと諦め、『どうせなら朝日が船の上に来ればいいのに』と待っていたら本当に重なった」と話す。
「妻が『だるま落とし』みたい。と言ったのでなるほどと思った。何事もハッピーに考えると人生が楽しくなることを、またしても太陽から教えていただいた」と目を細める。
一方、同じ志摩市阿児町国府から撮影していた伊勢志摩経済新聞のカメラマンは船の上に重なるタイミングを見計らっていたが、その願いはかなわなかった。「ダルマ朝日を撮影する確率もかなり低いが、大型船の上に重ねようと思ってもそう簡単にはできないことを体験した。『見ると幸せになれる』と言われる理由も十分理解できる。人生も常に自分の立ち位置で決まる」と話す。