伊勢志摩サミットが開催された賢島に本校がある通信制の代々木高校(志摩市阿児町)で現在、16歳高校1年生の棟方虎太朗さんが「伊勢志摩漁師コース」で遠洋漁船「第27源吉丸」に乗船し、漁師をしながら高校卒業を目指している。棟方さんは1月19日、新年最初の航海のため和具港(志摩町)を出航した。
埼玉県出身の棟方さんは2016年12月に同コースがあることを知り、昨年1月に面接を受けた。同校の一色真司校長は「これまでに2人が当コースを卒業しているが、生半可な気持ちでは務まらないことをはっきり伝えて脅かしたが、それでも漁師になるという決意を持ち続けたので和具近海鰹鮪(かつおまぐろ)船主組合と相談し、やってみることに」と当時を振り返る。
棟方さんは「目標は『舳(へ)乗り』(船の先でカツオを釣る人でもっともよく釣りみんなから信頼されている人)になること。昨年は約50航海あったが、最初の3航海目まではつらくて帰りたい、やめたいとばかり思っていた。でもそれを乗り越えたら楽しくて、今はとても充実している。高校の勉強も船の中でしたいと思うが…(なかなかできない)。昨年11月に下船してから1月までの期間に集中して高校に通い勉強し、何とか2年には進学できると思う…」と笑みを浮かべる。
棟方さんは、これまでの航海で最高15キロのカツオを釣り上げたという。小笠原諸島、ハワイ島周辺までカツオを追いかけて1航海で長いと2週間くらいは陸に戻ってこれない。同船は149トンで、最大90トンまで魚を積載可能。毎年全国10位以内の水揚げを誇っている。
同校担当教諭の皆川剛さんは「船酔いには悩まされるが、それを乗り越えると、年齢や経験も関係なく収入を得ることができて、親元を離れて自立できるのが伊勢志摩漁師コース。本人もやりがいを持って真剣に仕事に取り組んでいるので安心している。一航海の度に大きく成長して戻ってくるようだ。ただ、『船の中でも勉強をするようにと言ってはいるのだが…』とも。
皆川さんは「就労自体も1部単位として認められる。授業料は自分で稼いだお金で支払うので親への負担もかからない。乗組員の枠が限られているため、いつも募集しているわけではないが、日本の遠洋漁業の後継者育成の一助になればと思いながら継続して続けられるコースになれば。地域と共に育てていきたい」と期待を込める。