平安後期885年創建と伝わる「近長谷寺(きんちょうこくじ)」(多気郡多気町)で2月18日、家内安全や無病息災などを祈願する「春季厄除(やくよけ)大会式」が行われた。
【その他の画像】「近長谷寺」で春季厄除大会式、護摩法要の様子
国の重要文化財の指定を受ける像高6.6メートルの「木造十一面観音立像」がある真言宗山階派の同寺は、伊勢の豪族「飯高宿禰(すくね)諸氏」が、第58代光孝天皇の勅願所として建立。奈良の長谷寺、鎌倉の長谷寺とともに「日本三観音」の一つとして知られ、全国に200カ寺以上あるといわれる大和長谷型観音に属するものの中でも右手に錫杖(しゃくじょう)を添える姿は日本唯一。「仏像マニア」も訪れるという。
この日、境内には多くの参拝者が訪れ、日本修験道会による柴燈(さいとう)護摩や火渡り護摩が行われ、丹生大師(にうだいし)さんと親しまれる「丹生山神宮寺成就院」(多気郡多気町丹生)の岡本祐真副住職による護摩法要、厄払いの餅投げなどが行われた。
昨年10月の台風21号による大雨の影響で、この地域は土石災害の被害に合った。地域おこしグループ「一八会」らが、近長谷寺の十一面観音立像の「11」にちなんで半径11メートルの真円の田んぼ「長谷(はせ)の車田」(長谷)作り、手植え・手刈りの稲作文化を後世に伝えようと毎年米作りを行っていたが、その車田は今も土石流の土砂に埋まったままで、同寺の回廊も完全に崩壊した。
同会代表の逵(つじ)昭夫さんは、「台風21号で公民館が流された。幸い13世帯45人の住民は難なく無事だった。『大難を小難に、小難を無難に』と毎月行われている会合で話していただけに、建物の被害はあったが住民が無事だったことは何より。木造十一面観音立像のおかげ。今日の祭典ではただただ感謝を申し上げた」と話す。
多気町の長谷と神坂という山あいの狭い地域に立つ「普賢寺(ふげんじ)」「金剛座寺(こんごうざじ)」と同寺はどれも1000年以上の古い歴史を持つ。地元の人たちは親しみを込めて「多気のチベット」と呼んでいる。
「木造十一面観音立像」は毎月18日と日曜・祭日限定で、希望者だけに開帳している。拝観は10時ごろ~15時ごろ。拝観料は200円。