伊勢に春を運ぶ恒例の「神宮奉納大相撲」が4月1日、神宮会館(伊勢市宇治中之切町)内にある神宮相撲場で行われた。
スサノオの悪事を憂いアマテラスが岩屋の中に隠れて世の中が暗くなると、神様たちが協力し合いアマテラスを岩屋から外へ出そうとする救出劇が日本神話「岩戸伝説」。神話の中で岩戸を引き開け遠く信濃国(長野県戸隠)まで岩戸を投げ飛ばしたとされる怪力の神様が日本最初の力士といわれる「天手力男神命(アメノタジカラオノミコト)」。アマテラスが岩屋から出ると太陽の光が戻り、国中が再び明るくなった。伊勢神宮内宮(ないくう)正殿(しょうでん)内の相殿神(あいどのかみ)としても祭られている。
「神宮奉納大相撲」は、神事との関わりが深い国技=相撲を天照大御神を祭る伊勢神宮に奉納しようと1955(昭和30)年から始まった。今回で63回目。主催は伊勢神宮崇敬会(同)。
11時ごろ、参拝者であふれる五十鈴川に掛かる宇治橋が封鎖されると、神職に先導された横綱白鵬や鶴竜らが化粧まわしを着けた姿で、誰もいない宇治橋を渡った。
髙安、豪栄道、御嶽海、栃ノ心、逸ノ城、千代大龍による「そろい踏み」、鶴竜(太刀持ち=正代、露払い=錦木)が雲竜型、白鵬(太刀持ち=魁聖、露払い=石浦)が不知火(しらぬい)型の「手数(でず)入り」(土俵入り)の奉納を神宮神苑(しんえん)で行った。約7500人の相撲ファン、参拝者らが力士たちを見守った。
同相撲場では、7時から稽古相撲や、十両、幕下、三段目などの力士による取組が行われほか、禁じ手を紹介する「初切(しょっきり)」やのど自慢の力士が歌う「相撲甚句」などがあり、会場から笑いが漏れていた。
幕内力士上位16人によるトーナメント選士権では、白鵬が御嶽海を上手投げで倒し優勝した。志摩市出身で現在十両の志摩ノ海は今回の神宮奉納大相撲初取り組みだったが貴源治を送り出して初白星を飾った。会場は約2500人の観衆で埋まった。