NHK総合テレビのドキュメンタリー番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」の10月22日放送分に、「志摩観光ホテル」(志摩市阿児町)総料理長の樋口宏江さんが登場する。
天皇皇后両陛下をはじめ、皇室関係者や著名人が多く利用する同ホテルは、真珠いかだが浮かぶ英虞湾の中心に位置する賢島(かしこじま)に立ち、山崎豊子さん原作の小説「華麗なる一族」の舞台にもなった。2016(平成28)年5月に開かれた「G7伊勢志摩サミット」のメイン会場に選ばれた。1951(昭和26)年開業の「クラシック」と2008(平成20)年開業の「ベイスイート」の2つのホテルから成る。
樋口さんは1991(平成3)年、「志摩観光ホテル」に入社。「ホテル志摩スペイン村」(磯部町)のフレンチレストラン「アルカサル」のシェフに23歳の若さで抜てきされ、その後「志摩観光ホテル」のレストラン「ラ・メール」で経験を積んだ。先々代総料理長・高橋忠之さんと前総料理長・宮崎英男さんの薫陶を受け、料理人としての哲学や芸術性を磨く。2008(平成20)年の「ベイスイート」開業と同時に「(新)ラ・メール」のシェフを37歳で任され、両ホテルのメインダイニングの総料理長となり、近畿日本鉄道「都ホテルズ&リゾーツ」グループ23のホテルチェーンで唯一の女性総料理長となった。
番組では、伊勢志摩サミットで各国首脳たちが絶賛した料理を作った樋口さんを密着。ホテルの人気メニューで使うアワビが不漁となり、新たな看板メニューの開発に乗り出すが苦戦する様子や2人の息子を持つ母としての日々を描いている。ナレーターを橋本さとしさん、貫地谷しほりさんが務める。番組タイトルは「幸せのひと皿、母の覚悟 ホテル総料理長・樋口宏江」。
2カ月間樋口さんを密着取材したNHK名古屋局制作部ディレクターの岡嶋俊輔さんは「今回の長期密着取材を通じて、改めて伊勢志摩の食材の素晴らしさを実感した。樋口シェフは、時間を惜しまず地元の産地の元へ出向き、生産者の顔を見て直接言葉を交わしながら、新たな食材の発掘に努めている。その行動力の源にあるのは、生産者(地元)への愛、職場スタッフへの愛、そして家族への愛だと感じた。疲弊する地域産業や女性の働き方など、今回の取材ではさまざまな課題を考えさせられたが、樋口シェフは、それらに『料理』という形で答えようとする覚悟を持っていた」と話す。
「撮影した樋口シェフの『ひと皿』は20枚以上。天皇陛下即位礼の祝日の夜、皇室が訪れる伝統ホテルの総料理長の知られざる仕事の流儀をご覧いただけたら幸い」とも。
放送時間は22時30分~23時20分。再放送は30日0時20分~1時10分(一部地域を除く)。