「伊勢角屋麦酒(ビール)」を製造販売する二軒茶屋餅角屋本店(伊勢市神久)が現在、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響を受け、窮地に立たされている。
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1575(天正3)年創業の同社が、1997(平成9)年から展開する伊勢角屋麦酒は、「伊勢から世界へ」「世界のビールファンをうならせる」を合言葉に21代目社長の鈴木成宗(なりひろ)さんが立ち上げたブランド。国内外のコンペティションで数多くのメダルを獲得し、「ビール界のオスカー」ともいわれ最も歴史のある英「IBA(The International Brewing Awards)」で2017(平成29)年と2019年の2大会連続で、「ペールエール」がゴールドメダルを受賞した。
IBAゴールドメダル獲得により、世界が認めるクラフトビールとしての知名度も高まり、都市圏のビアバーを中心に多くの飲食店から受注が増加。2018(平成30)年5月には、全国の飲食店1万3000店以上に導入されている、キリンビール開発の小型専用サーバー「タップマルシェ」の銘柄に「ペールエール」と「ヒメホワイト」が採用された。同年9月には受注に対応すべく、市内の下野工業団地に敷地面積5117平方メートルのビール工場を新設した。
旧工場の神久工場では、マニュアルで醸造していたが、新工場ではオートメーション化。発酵・熟成タンクは、8000リットル4本、4000リットル10本、2000リットル9本に増設した。現時点で旧工場の4倍の9万リットルの生産が可能になった新工場は、恒常的にフル稼働で順風満帆だった。
鈴木さんは「下野工場でも順調良く安定的にビール生産ができるようになり、意欲のある新卒の新入社員も採用することができた。さらに工場の生産性を高め、『さあこれから!』と考えていた時に(新型コロナウイルス感染拡大で)、こんなになるなるなんて。まさかの坂は本当にあるのだと思った…。崖から突き落とされたような心境」と吐露する。
「これまでは、ビールの生産が追いつかない状態だったのが、突然、全く(在庫が)動かない状態になってしまった。非常事態宣言が出た都市部の飲食店さんを中心にご注文いただいていたので、それがゼロに。さらに伊勢神宮周辺・伊勢志摩全域で『神都麦酒(しんとびーる)』、和歌山・奈良・東紀州の熊野古道周辺で『熊野古道麦酒』をそれぞれ販売していたが、どちらも観光地であるため全く注文がなくなってしまった。今は、仕込んで(瓶詰めしないで)タンクにそのままキープされている状態。瓶入り、樽入りなどざっと計算しても12万リットル以上。330ミリリットルの瓶なら36万本以上になる。笑うしかないけれど、どうにかしないと…」と困惑する鈴木さん。
鈴木さんは「現在、当社のネットショップにてお得な『宅飲みセット』を展開中。おかげさまで多くのファンの皆様から応援いただきご購入いただいているが、それでもまだまだ先が見えない状態…。『熊野古道麦酒』が3本入った常温保存可能な『宅飲みセット缶4種6本』は通常3,423円を2,058円に(送料込み価格)。ご購入いただき、お知り合いの方にもご紹介していただき、さらにSNSでもシェアしていただき、購入を促していただければ」と呼び掛ける。