新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響を受けて窮地に立たされている「伊勢角屋麦酒(ビール)」を製造販売する二軒茶屋餅角屋本店(伊勢市神久)が現在、今できることを模索しながら様々な企画を準備している。
【その他の画像】伊勢角屋麦酒のビールほか12種類のクラフトビールセット
創業1575(天正3)年、同社21代目の社長・鈴木成宗(なりひろ)さんが1997(平成9)年に立ち上げたクラフトビールブランドが「伊勢角屋麦酒」。国内外のコンペティションで数多くのメダルを獲得、中でも「ペールエール」は、世界で最も歴史のある英「IBA(The International Brewing Awards)」で2017(平成29)年と2019年の2大会連続でゴールドメダルを受賞した。
新型コロナウイルスの影響を受け同社のビール工場の発酵・熟成タンク合計9万リットルは4月11日時点で、ほぼ満タンの上、瓶詰め、樽詰め済みのビール、合わせて約12万リットルが眠ったままになっていた。
そこで鈴木さんはSNSで「助けて下さい」と素直に訴え、イセカドビールファンや友人・知人、支援しようと手を挙げた人たちから5000件以上の注文を得た。しかしながらまだまだタンクにはビールがストックされた状態になっているという。
鈴木さんは「たくさんのご注文と、励ましのメッセージをいただき、社員一同、勇気と元気をいただいた。とてもありがたく心から感謝申し上げたい。改めて人の温かさに触れ身にしみた。いただいたたくさんの優しさの輪を自分たちだけで留めることなく、少しでも広げて社会に恩返しをしたいと強い思いに変わった。今できることを考え実行していこうと思う」と言葉にする。
同社は、かまぼこやさつま揚げなどを製造販売する「若松屋」(伊勢市河崎)のさつま揚げ、神棚や神具を製造販売する「宮忠」(伊勢市岡本)の厄除け「蘇民将来(そみんしょうらい)子孫家門」のストラップを、ビールとセットした商品を矢継ぎ早に販売。コロナで売り上げが激減している事業者とのコラボ商品も次々と展開予定。第3弾では、三重郡菰野町の「角屋」のハムやソーセージとのセットを準備する。そのほか、同社主催のオンライン飲み会の開催や取引先のビアバー主催のオンライン飲み会への協力、クラウドファンディングを活用した取り組み、オリジナル限定ラベルのビール販売、全国のブルワリーとコラボしたクラフトビールのセット商品の販売などを企画する。
5月8日から販売開始した全国のブルワリーとのコラボセット「6+1ブルワリー12本セット」は、「箕面(みのお)ビール」(大阪府箕面市)の「W-IPA」「DARK LAGER」、「Y.MARKET BREWING(ワイ・マーケットブルーイング)」(愛知県名古屋市)の「パープルスカイペールエール」「ONE AND ONLY HAZY IPA」、「金しゃちビール」(愛知県犬山市)の「プラチナエール」「セッションIPA」、「T.Y.HARBOR Brewery(ティーワイハーバーブルワリー)」(東京都港区)の「Melvin style session IPL」「Imperial 」、「門司港レトロビール」(福岡県北九州市)の「ヴァイツェン」と「ヴァイツェン・ストロング」、まだ単品販売していない同社の「ジンジャーヘイジーIPA」と「城山ブルワリー」(鹿児島県鹿児島市)とのコラボビールで当初「城山ホテル鹿児島」(同)限定ビールとして販売する予定だった「ファヴール・エール」の計12種類を送料込み7,606円の価格で120セットを販売した。
同社ブルーマスターの出口善一さんは「12種類のコラボセットは、ワイ・マーケットブルーイングさんからの声掛けで準備した。イセカドビール以外のクラフトビールも飲んでもらえることや、同じように苦しんでいる全国のブルワリーの売り上げに少しでも貢献できればと思い取り組んでいる。好評であればほかのブルワリーにも声をかけて第2弾、第3弾も準備したい。苦しい日々が続いているが、私たちのビールが癒(い)やしと楽しみに満ちた時間をお届けできることを切に願う。hand in hand(手を繋いで)知恵を出し合い、できる工夫をして手をつなごう」と話す。