四日市市立港中学校(四日市市十七軒町)の生徒約60人が9月27日、修学旅行で志摩観光ホテル(志摩市阿児町)を訪れ、日本の食文化やテーブルマナーを学びながら昼食を取った。
毎年、東京方面に2泊3日のスケジュールで修学旅行を計画する同校。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、急きょ三重県内に行き先を変えた。早朝四日市を出発し、三重県立博物館(津市一身田)、同ホテル、鳥羽水族館(鳥羽市鳥羽)、鳥羽シーサイドホテル(鳥羽市安楽島町)に宿泊し翌日、鳥羽市民文化会館(鳥羽市鳥羽)、志摩スペイン村(志摩市磯部町)などを訪問。バスの乗降時には検温、手の消毒、マスク着用なども徹底する。
2016(平成28)年にG7伊勢志摩サミットが開催された同ホテルで一行は、各国の首脳たちの舌をうならせたフランス料理や一流のおもてなしサービスを体験した。
日本の食文化講座では、かつお節製造販売の「かつおの天ぱく」(志摩市大王町)社長の天白幸明さんが、伊勢神宮では毎日朝夕2回、神さまに食事を提供する「日別朝夕大御饌祭(ひごとあさゆうおおみけさい)」が行われていること、神さまの食事「神饌(しんせん)」の中には必ずかつお節が入っていること、かつお節から取るだしが世界で注目されていることなど、料理と文化の関係について考察する「ガストロノミー」についてレクチャーした。
テーブルマナー講習では、同ホテル料飲部営業支配人の椿知也さんが、座り方やナプキンの使い方、ナイフ・フォークを取るタイミング、食事のスピード、スープやパンの食事の仕方などについて説明。緊張する生徒たちは、次々に提供される料理を学んだテーブルマナーを実践しながら、食事を楽しんだ。
同校の新田英生校長は「今年も5月の出発で修学旅行を計画していたが、新型コロナウイルスの影響で当初の計画を中止せざるを得ない状況に陥り、行き先に苦慮していた。東京行きは即断念。北陸方面への旅行を検討していたが、第二波の感染拡大でそれも断念した。コロナ対策も考えながら生徒が一生の思い出になる旅行をと伊勢志摩方面に絞って考えていたところに、JTB三重支店(津市栄町)から理想としていたツアーをご提案いただいた。本来なら大型バス2台でいいのだが、三密を避けるために3台に分散させるなどの対策を取った」と説明する。
生徒たちは「緊張して味がわからなかった」「伊勢エビのスープは濃厚でとてもおいしかった」「魚が好きなので伊勢マダイの包み焼きがとてもおいしかった」「牛フィレ肉のステーキは今まで食べた肉の中で一番柔らかくおいしかった」「伊勢志摩サミットが行われた高級ホテルでこのような経験をできたことはとてもいいこと。最初は緊張していたが次第に楽しめた」「東京へも行きたかったが、地元を知るということでとても勉強になった」「かつお節についてもっと知りたいと思った」などと感想が寄せられた。
新田校長は「樋口宏江総料理長が四日市市(羽津中学校)の出身だということを知りとても親近感が湧いた。お料理はとてもおいしく、世界につながる場所を体験することができ、生徒たちにとっても、いい経験になった」と話す。
天白さんは「ハワイに留学した学生時代、日本や地元の歴史・文化について何も知らずアメリカの人たちに説明できなかった苦い経験があった。将来、ご先祖さまが培ってきた歴史や食文化など地元の宝を探し、世界中の人たちに自慢し発信してほしい」と思いを込める。