季刊誌『NAGI (なぎ)』などを出版する「月兎舎(げっとしゃ)」(伊勢市馬瀬町)が4月、「スロー」をテーマにした三重県内のレストランを紹介するガイドブック「三重のスロー食堂3」を刊行した。
持続可能な暮らしをテーマに編集する「NAGI」は、環境に与える負荷を少なくした第一次産業、産地から消費地までなるべく短距離で結ぶ流通、食材本来の生命力を損なわない加工や販売方法などを実践する人々を「スロー」な生き方の手本として紹介している。
同書は、「NAGI」の別冊と位置づけ、これまで取材した洋食、和食、すし、そば、カフェなど三重県内の飲食店95店を紹介。同様のコンセプトで2007年に「スローフード三重」、2011年に「三重のスロー食堂」、2015年に「三重のスロー食堂II」を出版している。
過去に出版した3冊との違いは、ジャンル別から5つのエリア別に変更。個室の有無やカード、電子マネー利用の可否などの情報を充実させ、古くなった料理の写真などは撮り直して新しくした。
坂美幸編集長は「当初は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、昨年の春から伊勢で親しくさせていただいているレストランや飲み屋さんが次々と自粛し、テークアウトでしのいでいる現状を見るにつけ、『こんな時期にごはんを食べに行こう』と呼び掛ける本を出していいのか悩み、企画することをあきらめていた。しかし、夏が過ぎて社会が落ち着いてきたころ、『思ったより客が戻らない』と話す店主と、『ずっと外食していない』という消費者の声を聞くにつけ、感染拡大防止に努めている誠実なお店まで廃業に追い込まれてはいやだ、地元の飲食店を応援したい、コロナ禍だからこそ地域の人と人が顔を合わせ、お互いの今を話せるような場所を紹介するガイドブックを出すべきだと思い、発刊することに決めた」と打ち明ける。
坂編集長は、「同書は、『NAGI 』創刊から21年にわたる取材の中から、『スロー』をキーワードに再編集した食のセレクトガイドブック。これまでは野菜、魚など、第一次産業へのリスペクトやベジタリアン対応の観点からジャンル別にしていたが、今回は『近くの人とまずつながっていただきたい』という思いを込めて、エリア別に変更し、県内を北から南へ紹介することにした」と話す。
価格は1,100円。三重県内の主要書店、道の駅、同社ホームページ、ネット書店などで販売している。