志摩市在住の農業を営む男性が5月15日、管理する水田近くの木の枝にモリアオガエルの卵を発見した。
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両生綱、無尾目、アオガエル科、アオガエル属に属するモリアオガエルは、外敵から守るため、池沼やため池、用水などの静水域の水面上に垂れ下がる木の枝や葉に、乳白色の泡状でできた直径10~20センチほどの卵塊(らんかい)を作るのが特徴。雌に複数の雄が群がり、産卵と受精が行われ、その時に出る粘液を足でかき混ぜるようにして卵塊ができる。卵塊の中には300~500の卵を産み、卵は1~2週間でふ化し、泡の中でオタマジャクシに生育する。泡の中のオタマジャクシは、雨が降るのを待ち、雨で泡が溶け水面に落下し、そのままカエルになるまで水中で生活する。成体になると山に移動し陸上で生活する。
三重県では北勢、伊賀地域の山間部で多く発見されている。「池ノ谷のモリアオガエル繁殖池」(多気郡大台町)は県の天然記念物に指定されている。三重県総合博物館(津市)によると、これまでに2010(平成22)年に南伊勢町で、1976(昭和51)年に鳥羽市でモリアオガエルの卵塊が発見された記録があるが、志摩市での記録は今回が初めてという。
男性は「この水田を作るようになって今年で3年目になる。15年以上ここで稲作をしていた人に聞いてみたが、モリアオガエルの卵は見たことがないという。不思議な生態を持つモリアオガエルが近くにいるということを感じ、豊な自然環境の中で稲作をさせていただけることはとても有り難い」と話す。
一方、男性は「見つかった卵塊の枝の下には水がないので、オタマジャクシになって落下した時にみんな死んでしまうのではと心配している。何かいい方法はないか、水を張った桶か何かを下に置いておいていいものか」と悩んでいる。
鳥羽水族館(鳥羽市鳥羽)でカエルの飼育展示を担当し、カエルの生態に詳しい飼育研究部の三谷伸也さんは「最初に話を聞いた時に、同じように泡の中に卵を生むシュレーゲルアオガエルかもと思ったが、実際に現地で見てみると、大きさや木の枝に産みつけた様子を見るとモリアオガエルの卵塊だといえる。ただ、心配するように卵塊の下には水たまりがないのでオタマジャクシとして落下すると生存率は低くなるだろう」と説明する。
5月15日に男性が卵塊に気が付いた時には1個だけだったが、三谷さんが確認に行った22日には新しくできた卵塊が2個増え、計3個の卵塊ができていたが、全ての卵塊の下には水たまりがない状態になっている。
三谷さんは「夜になると、繁殖期の雄のカエルが雌のカエルを呼ぶ求愛音=メイティングコールが盛んに行われている可能性がある。成体が近くにいてまだ卵を生む可能性もある。志摩市でモリアオガエルがいることがわかったことは貴重な記録になる」とも。