二見興玉神社(伊勢市二見町江)の特殊神事「藻刈神事(もかりしんじ)」が5月23日、夫婦(めおと)岩の沖合の船の上で行われた。
同神事は、夫婦岩の沖合700メートル先の海中に鎮座する猿田彦大神ゆかりの興玉神石(おきたましんせき)に生えるアマモ「無垢塩草(むくしおぐさ)」を刈り取るというもの。刈り取ったアマモは後日、天日干しし乾燥させ、同神社のお祓(はら)い時に使う祓具(はらいのぐ)「無垢塩大麻(たいま)」や授与品の不浄祓(ふじょうはらい)守り「無垢塩草」(初穂料=300円)になる。
興玉神石は、東西約240メートル、南北約120メートル、周囲約960メートル、高さ約7メートルの楕円形をした平岩で、1854(安政元)年12月23・24日(旧暦11月3・4日)に発生した安政の大地震「東海・南海地震」(32時間後に連続発生、推定マグニチュード=8.4)で、完全に海の中に沈んだという。
アマモは別名「リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ(龍宮の乙姫の元結の切り外し)」とも言われ、日本の沿岸部に分布する海草で最も長い和名として知られる。
同祭は毎年5月21日に行われているが雨天のため、祭典のみ本殿で行われ、藻を刈り取る神事は23日になった。この日は、「澳魂祭禮(おきたまさいれい)」と書かれたのぼりを立て、しめ縄を張り巡らせ、祭壇を設けた和船に金子清郎宮司と神職が乗り込み、興玉神石のある海上で、2拝2拍手1拝の後、神酒、御饌(みけ)を海中にささげ、アマモを丁寧に手鎌で刈り取った。