南伊勢町内瀬(ないぜ)地区でかんきつ類を栽培するアサヒ農園(度会郡南伊勢町)のビニールハウスで11月10日、高級品種の「せとか」の袋掛けが始まった。
「せとか」は、2001(平成13)年に長崎の果樹試験場で生まれた品種。「宮川早生(わせ)」と「トロビタオレンジ」から生まれた「清見」に、「キング」と「地中海マンダリン」から生まれた「アンコール」を掛け合わせ、さらに「マーコット」を交配して育成したかんきつで、「かんきつの大トロ」「幻のかんきつ」の別名を持つ。
外果皮が柔らかく簡単に手でむけ、内皮(じょうのう膜)も薄くそのまま食べられる。味は濃厚で果肉はジューシーで、種が無く香りが豊かで糖度も高いのが特徴。栽培は温州みかんなどよりも手間が掛かるため、生産する農家は多くなく供給量が少ないことから価格は高い。
4月ごろに花が咲き、実が膨らみ始めると、花を摘み取る「摘花」、せとか特有の鋭く細いとげを切る「とげ切り」、枝の成長が早いために枝を摘み取る「芽かき」、「防虫駆除」、実の重さに耐えるように枝をひもでつる「枝つり」などの作業を行い、日焼けによる退色防止や果実の表面保護のため果実に袋を掛ける「袋掛け」を行う。
南伊勢町若者チャレンジ応援事業に応募し、同園で働く同町出身の21歳・山本龍生さんは「せとかはとげがたくさんあるので、サンテ掛け(袋掛け)作業は知らないうちにとげで傷ができていたり、作業着が破けてしまったりするので気を付けている。それでも傷は絶えないが、自分が世話したミカンがおいしくできるとうれしい」と話す。
同農園5代目の田所一成さんは「せとかの栽培は本当に手が掛かるのでミカン農家は誰もやりたがらない。せとかのおかげで、銀座の千疋屋(東京都中央区)との取引ができてその後、志摩観光ホテル(志摩市阿児町)などに納品させてもらえるようになった。今となってはアサヒ農園の看板商品になっているので、手を抜かずおいしいせとかに仕上げたい」とほほ笑む。
せとかの出荷は来年3月ごろを予定。