鳥羽水族館(鳥羽市鳥羽)で国内唯一飼育展示していたアフリカマナティー雄の「かなた」が7月27日8時20分、息を引き取った。
「かなた」は、1996(平成8)年にギニアビサウ共和国より、雌の「はるか」と共に入館。それぞれの名前は「はるかかなた遠くより日本にやってきた」という理由から公募で選ばれた。国内唯一飼育展示するジュゴンの「セレナ」と共に、28年間愛されていた。これによりアフリカマナティーは、雌1頭「みらい」だけになった。
2014(平成26)年に「はるか」が死に、2010(平成22)年入館の雌の「みらい」と2頭で暮らし繁殖への期待もあったが、子宝には恵まれなかった。「かなた」は今後、老衰の可能性を含め解剖・病理検査などを行ない死因の究明を行う予定。
アフリカマナティーは、海牛目マナティー科に属する草食動物。アフリカ西海岸のモーリタニア南部からアンゴラ、マリ、ニジェール、チャドにかけて分布。汽水域や河川・湖沼などの淡水域に生息。全長約3~4メートル。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにおいては絶滅危惧種に指定。ワシントン条約で国際的な商取引が規制されている。
飼育担当者は「1996年にギニアビサウから空輸で一緒に鳥羽水族館に帰ってきたのが懐かしく思い出される。国内では同種の展示は例がなく、マナティーを含めた海牛類の飼育について、重要な知見をわれわれに与えてくれたかなたに感謝したい。天国でゆっくり休んでください」と話す。