ミキモト真珠島(鳥羽市鳥羽、TEL 0599-25-2028)内に建つ御木本幸吉の銅像に12月12日、坂手島から現れた「大きな真珠」が重なった。遠く太平洋を見つめてたたずむ幸吉は今年、生誕150年を迎えた。
1905(明治38)年、伊勢神宮に行幸された明治天皇に「世界中の女性の首を真珠でしめてごらんにいれます」と申し上げたエピソードは有名。それから100年のうちに「真珠養殖業」から「真珠産業」へと発展させ、幸吉の約束は現実となった。しかしながら、その現実は市場の飽和を意味し、新たな真珠の販売戦略が問われている時でもある。
昨今の急激な円高、世界同時株安など、真珠業界にとってもネガティブな要因が突如押し寄せた。例年12月から始まる「真珠の入札」が、今年は需要の低迷などから来年1月に先延ばしされた。真珠養殖業者にとっては予定していた収入が1カ月伸び経営的にも厳しい状況に迫られている。今、真珠業界全体が岐路に立たされている。
そんな中、ミキモト(東京都中央区)は、2007年から福岡県相島(あいのしま)で天然貝を使った真珠の養殖事業を県や大学などとともに研究開発。志摩市でも真珠養殖盛んな英虞湾の自然環境を再生させようと今年3月、「英虞湾自然再生協議会」が立ち上がった。
「神戸ルミナリエ」でにぎわう神戸では、真珠販売業者などで作るNEO PEARL KOBE(ネオパール神戸)が企画し、真珠会館(神戸市)を使ってリーズナブルでカジュアルなデザインの真珠製品を扱う期間限定ショップ「真珠の物語が生まれる部屋」を展開したところ、1日平均50万円以上の売り上げ(客単価約7,000円)を記録する人気となっているという。
業界全体が、これまでの「真珠」から「新真珠」を探して、動き始めた。150歳の御木本幸吉ならどんなユーモアでこの難局を打破するだろうか。