女優の吉永小百合さんが6月2日、映画「潮騒」(三島由紀夫原作)のロケ地となった伊勢湾口に浮かぶ神島(鳥羽市)を49年ぶりに訪れ、島民たちが設営した「潮騒の集い」で撮影当時を懐かしんだ。
神島は、鳥羽港から約14キロ、愛知県伊良湖岬から約3.5キロの伊勢湾口に位置し、総面積は0.76平方キロメートル、周囲3.9キロ、人口約400人。同映画の撮影があった1964年当時吉永さんは、10日間だけ滞在した。
吉永さんにとって第2の故郷とも言える神島への「里帰り」は、再訪を望む島民からの切実なラブコールに応えたもの。歓迎セレモニーでも吉永さんは、「私は過去を振り返ることは好きではないので、これまでも撮影地を訪れることはあまりなかったが、皆さまのパワーがそうさせた」と挨拶。島には約2000人のサユリストたちが駆けつけ、撮影当時以来の大フィーバーとなった。
島民と吉永さんとの交流会では、撮影当時のエピソードなどを語り合った。当時吉永さんと毎日のように過ごし遊んだという小学6年生の女の子3人組は現在60歳に。「吉永さんが島を離れる日に学校の先生に無理を言って授業を抜け出して港まで見送りに行った。15分だけの約束をオーバーして罰として廊下に立たされ、吉永さんとの別れの寂しさと、怒られたことの辛さなどで泣きながら立っていたことが今でも忘れられない」と微笑ましいエピソードを披露した。
吉永さんは「10日間だけの撮影だったが1カ月以上も居た気がした。とても心地よく、島の娘になったような感覚を今でも覚えている。当時は島の人がその日に取れたいろいろな魚を食べさせてくれて、高級なアワビなどよりもおいしかった。島の人たちの温かさが、ぬくもりのある映画となったんだと思う。また来ます」と約束した。
その後、吉永さんは約30分間島を散策、大勢の人に見送られながら島を後にした。
鳥羽市は、映画のクライマックスシーンで使われた旧陸軍施設「監的哨(かんてきしょう)」を耐震補強・改修、定期船乗り場付近を「潮騒公園」として整備し「三島文学・潮騒の地」のモニュメントを設置。日活(東京都文京区)は、100周年記念企画として吉永さん本人が選んだ「私のベスト20 DVDマガジン」をおとなの週末編集部(講談社)から「キューポラのある街」「伊豆の踊り子」など全20巻を発刊。「潮騒」は7月13日に発売される。