昭和初期創業の老舗伊勢うどん店「山口屋」(伊勢市宮後、TEL0596-28-3856)で提供されている「ごちゃいせうどん」(1,100円)が人気を集めている。
「具がごちゃ混ぜ」という意味から命名されたごちゃいせうどんは、同店で提供する各種伊勢うどんの上に載る具(かやく)を全部トッピングしたいわゆる「全部載せ」だ。エビの天ぷら2尾に牛肉、かまぼこ、油揚げ、麩(ふ)、刻みネギが載り、具でうどんが見えないほどのボリューム。
同店3代目店主の山口敦史さんは「ごちゃいせうどんは、志摩からわざわざ来てくれていた常連客の『具を全部載せて~』の一言から定番メニューとなった。今では当店一番人気のメニューに。その方はもう亡くなってしまったが、病気で伊勢の病院に入院していたときには、病室を抜け出して食べに来てくれたこともあった」と話す。
コシなしフニャフニャの極太麺で、コシが命の讃岐うどんと対極にある「伊勢うどん」が、伊勢神宮・式年遷宮ブームに乗っかって、伊勢のソウルフードとしてガイドブックや雑誌、テレビの旅番組などで頻繁に紹介され、参拝客や観光客の間に確実に広まっている。
ツイッターで「伊勢うどん」と検索すると、昨年までは「まずい」「おいしい」の評価は半々だったのに今年に入ってからは「また食べたい~」「初めての伊勢うどん、アリかも」など好印象のつぶやきが目立つようになっている。
今年すでに1000万人の参拝者を突破した伊勢神宮。参拝者の増加に合わせて伊勢うどん「体験者」が急増。うどんにタレとネギだけを掛けた伊勢うどんの基本形体験者の最近のニーズは、「天ぷら伊勢うどん」や「肉伊勢うどん」など好みの具を選択する指向に変化しつつある。「ごちゃいせうどん」の人気はそういったニーズも追い風となっているようだ。
山口さんは「その方に、病室まで出前をしてほしいと言われたがお断りをしてしまった。それがその方との最後の会話となってしまったことが、今でも悔やまれる」と振り返る。「その方が愛してくれたごちゃいせうどんを多くの人に食べてもらえれば」とも。
同店の営業時間は10時~19時。木曜定休。