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志摩の文楽「安乗の人形芝居」、中断乗り越え地元中学生らが伝統守る

志摩の文楽「安乗の人形芝居」、中断乗り越え地元中学生らが伝統守る

志摩の文楽「安乗の人形芝居」、中断乗り越え地元中学生らが伝統守る

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 400年以上前から伝わる人形浄瑠璃「安乗文楽(あのりぶんらく)」が9月15日・16日、安乗神社(志摩市阿児町安乗)の境内にある人形芝居舞台で上演される。

400年以上続く安乗人形芝居

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 安乗文楽の歴史には逸話が残る。豊臣秀吉に仕え水軍として活躍した武将・九鬼嘉隆が1592年の文禄の役出兵の際、鳥羽城を出て安乗沖にさしかかった時に逆風が吹き逆戻りし、仕方なくニワの浜(同)へ上陸避難した。そのとき、八幡宮に参拝し海上安全と戦の勝利を祈願した。その後、朝鮮での合戦に勝利し、同じ年の8月15日にお礼参りに再び来村。「無事帰って来られたのは八幡宮さまのおかげだ。何なりと申し出よ」と言ったので、「人形芝居を毎年行うことを許してほしい」と村人が願い出たことから人形芝居が始まったとされる。

 安乗文楽は過去に一度途絶えたことがあった。同地は風待ち港として栄え大阪、阿波、淡路などの影響を受け人形芝居の技術も向上し、江戸時代から明治の初めころまで最盛期を迎えたが、明治20年代ごろから帆船から機関船に変わり寄港する船が激減。1925(大正14)年の上演を最後に1949(昭和24)年まで中絶した。

 その後、復興を願う人たちによって1950(昭和25)年、後援会ができ、翌1951(昭和26)年に安乗人形芝居保存会が結成され、1978(昭和53)年には後継者育成を目的に安乗中学校に「文楽クラブ」ができた。それらの活動により、1952(昭和27)年、三重県指定の無形文化財、1980(昭和55)年国の重要無形民俗文化財の指定を受けた。国際的な流れの中でもユネスコは、長い時間をかけて世代から世代へ、口承などにより伝わる祭りや芸能、社会的慣習などに対して、国際的な「保護」「尊重」「理解」「協力・援助」を目的に2008年、「人形浄瑠璃文楽」を「無形文化遺産」に指定した。

 毎年同神社の秋の例大祭に合わせて奉納される安乗文楽。15日は、安乗小学校の5、6年生35人による人形劇「勧進帳」、同クラブの24人が「鎌倉三代記~三浦之助母別れの段」を、同保存会が「戎舞」「傾城阿波の鳴門~巡礼歌の段」を、16日には、同保存会が「壺坂観音霊験記~沢市山の段」「伊達娘恋緋鹿子~火の見やぐらの段」「生写朝顔話~大井川の段」を遣い手として演じる。太夫を竹本友和嘉さん、三味線を豊沢町子さんが担当する。両日の14時から「三番叟(さんばそう)」の上演もある。

 同保存会メンバーは「一体の人形を3人掛かりで操る難しさ、間の取り方、しぐさなど、夏休みも返上し汗をかきながら練習してきた子どもたちの演技に注目してほしい」と話す。

 開演は両日とも18時30分。15日には、安乗灯台の夜間無料公開(17時30分~20時30分)も予定する。

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