志摩地方に伝わる郷土料理の研究やもしもの時の防災レシピの料理教室など食について幅広く活動するおかみの会「志摩いそぶえ会」(志摩市志摩町)が3月14日、漁師らが見向きもせず流通しない魚を利用してフランス料理に挑戦した。
「これはメンドリ」
「めんどり?」
「こちらはテス」
「テス?」
「イラともいう」
「イラ?イライラ…(笑)」
「ネコ持ってきて、ネコ…」
志摩町文化会舘の調理実習室で驚くような会話が飛び交っていた。
「メンドリ」は、「ウミヒゴイ」というスズキ目ヒメジ科、長いヒゲが特徴の赤色の魚。「テス」は、「イラ」というスズキ目ベラ科の魚で「ブダイ」と間違えられることが多い。共に白身の魚で、この時期伊勢エビの刺し網によくかかるが、市場にはほとんど流通しない。「ネコ」は、「ネコザメ」のことで、メジロザメ目トラザメ科の学名「ナヌカザメ」のこと。この地方では湯引きして酢みそで食べると晴れの日の一品になる。
この日は、未利用魚を利用してフランス料理に挑戦しようと、グランドプリンスホテル京都(元京都宝ヶ池プリンスホテル)(京都市左京区)やグランドプリンスホテル広島(広島市南区)の総料理長を務めた吉田幸生さんが指導に当たった。吉田さんは歴代首相やダライ・ラマ14世にも料理を提供した実績を持つが、新鮮な「メンドリ」や「テス」「ネコ」を調理するのは初めてだという。完成した料理は伊勢エビとメンドリ・テス(白身魚)のブイヤベース、メンドリ・テスのマスタードソース、ネコのムニエルの3品。
同会は、昨年9月に地元で上がる新鮮なサバを「いつきさば」とブランド化し付加価値をつけて加工品を創造しようと活動する志摩市商工会(阿児町)と連携し志摩観光ホテル(阿児町)で42年間の実績を持つフレンチシェフの高木順さんの指導を仰ぎ、三重県立水産高校(志摩町)の高校生らと協働でサバの缶詰を作り、高い評価を得た。
同会の伊藤泰子会長は「今まで見向きもしなかった魚(食材)に目を向けて何か新しい料理ができれば」と期待を込める。「フランス料理はまだまだ慣れないので感覚がついてこない。あと2、3回来ていただいて教えていただかないと…」と吉田さんに次の予定を促していた。
吉田さんは「フランス料理の基本は教えたつもりだが、どこまで理解してくれたか?(笑)われわれは料理に対しての先入観があるので冒険はできないが、皆さんはそれがないのでアイデアがどんどん出てくると思う。型にはまらず自由に料理していただければ。料理には正解はないのだから」と締めくくった。