2月2日に全国一般公開された映画「きいろいゾウ」のロケ地となった松阪市柚原(ゆのはら)町の「ムコとツマの家」や南伊勢町斎田(さいた)地区の「アレチさんの家」「大地君がいた駒井さんの家」などをファンらが巡る「聖地巡礼」が始まっている。「聖地巡礼」とは、映画やドラマなどで物語の舞台となった地を実際に訪れることをいう。
「ツマ」(宮崎あおいさん)の話し相手の「ソテツ」(声は大杉漣さん)の今はこんな感じ
映画は、向井理さんと宮崎あおいさんが劇中でお互いを「ムコ」と「ツマ」と呼び合う夫婦役を演じ、三重県度会郡南伊勢町田曽(実際に存在する「田曽浦」ではない)という架空の地で田舎暮らしを始める。築120年以上の家に住み、「ムコ」は小説を書きながら近くの福祉施設で働き、「ツマ」は木や草花、動物たちと話をしながら「ムコ」を家で待つ妻を演じる。
伊勢志摩フィルムコミッション(伊勢市二見町)は、「きいろいゾウ」のロケ地マップ2万部を製作し、県内と近隣県の上映館、ロケ地となった地の観光協会などに配布、ホームページからもダウンロードできるようにした。ロケ地のある松阪市と南伊勢町は黄色いゾウのイラスト入り統一デザインの案内看板を設置し、わかりやすいよう「巡礼者」に配慮する。
「ムコとツマの家」となったロケ地は、伊勢自動車道松阪インターチェンジから車を約30分走らせた標高350メートルの山の中にある柚原町。人口81人で65歳以上の高齢者が56人と、いわゆる限界集落と呼ばれる寒村だった(1月31日現在)。しかし映画が公開された初日の2日には約50人が、翌日の3日には人口よりも多い100人以上のファンが詰め掛けた。案内所と飲食店を兼ねる「うきさとむら」(TEL 0598-35-0201)は1月22日から、毎週金曜~月曜に同家を無料で案内するサービスを始めた。
「ムコとツマの家」の庭にあった「ソテツ」はもともと南島メディカルセンター(南伊勢町慥柄(たしから)浦)にあったものを柚原の同家の庭に移植し、撮影終了後南伊勢町役場南勢庁舎(南伊勢町五ヶ所浦)に再移植した。「ソテツ」のある南勢庁舎や「ムコ」と「ツマ」が暮らす村という設定の南伊勢町斎田地区にも同様にファンらが立ち寄り、記念写真を撮る光景が映画公開後見られるようになった。
公開初日に映画を見て次の日に「ムコとツマの家」をふらっと恋人と訪れたという丹羽保晶さんは「映画を見たすぐなので、あの時のあのシーンがここで撮影されたんだと思うと、とてもワクワクしてうれしくなる。来て良かった」と感想を漏らす。映画公開後、「ムコとツマの家」のガイド役を買って出た元柚原町出身の中尾一郎(かずお)さんは「映画のロケ中ずっとお手伝いをしていたので、ほとんどのことは分かる。宮崎さんがハチに刺されて泣くシーンではその泣き声が村中に響き渡った。ヤギの『コソク』が本当に脱走した時には村中が大騒動になった(笑)」と裏話を披露する。
うきさとむら運営協議会の西井静男会長は「限界集落といわれるこんな村に、若い人たちがたくさん来てくれるようになった。向井さんや宮崎さんらも食べた『鶏のからあげ』『モロヘイヤうどん』を提供する当店も繁盛してうれしい限り。2月17日には『じゃんぼ七草粥』、毎月第3日曜には『早起き市』を開催しているので、それに合わせて気軽に足を伸ばしてもらえれば」と呼び掛ける。
伊勢志摩フィルムコミッションの島田将秀さんは「伊勢志摩といえば観光地のイメージが強いが、ロケ地となった地域には、生活感あふれる日本の原風景が今も残る」と説明。「ロケ地を見学する際には所有者に了解を得て、マナーを守って見学してほしい」と注意喚起も忘れない。
ロケ地となった場所は以下の通り。
1.「ムコとツマの家」松阪市柚原町の大浦邸
2.「ムコとツマの家の蔵」(内部のみ撮影)多気町車川の油田邸
3.「ツマたちが歩いた木々のトンネル」志摩市志摩町越賀の金比羅山への山道
4.「ツマ、大地君、洋子が遊ぶ海」同上の阿津里(あずり)浜
5.「ムコの職場 しらかば園」(外観のみ撮影)南伊勢町慥柄浦の南島メディカルセンター
6.「しらかば園の演芸会の会場」南伊勢町切原の切原公民館
7.「ツマの話し相手のソテツ」南伊勢町五ヶ所浦の南伊勢町役場南勢庁舎玄関
8.「しらかば園の部屋」同上の特別養護老人ホーム柑洋苑(かんようえん)
9.「ムコとツマが遊びに出かけた海」南伊勢町田曽浦の田曽白浜
10.「アレチさんの家」南伊勢町斎田の前田邸
11.「大地君が泊りに来ていた駒井さんの家」同上の島田邸
12.「大地君がツマに相談する道・ムコとツマの畑」同上の斎田川の堤
13.「ムコとツマが出会ったカフェ」伊勢市本町のフランス料理店ボン・ヴィヴァン