6月30日、二見興玉神社(伊勢市二見町)の境内社「竜宮社」で、津波の教訓を後世に伝える祭典「郷中施(ごじゅうせ)」が行われた。昭和天皇の御製「天地(あめつち)の神にぞいのる朝なぎの海のごとくに波たたぬ世を」を拝誦(はいしょう)し、みこ(巫女)が「浦安の舞」を舞う。
【その他の画像】「郷中施」小舟にキュウリとナスとミルナとマツナを載せて
旧暦5月15日に毎年行われる「郷中施」は、村中の人たちが助け合い、施し合ったことから付けられたという。綿津見大神(わたつみのおおかみ)を祭る竜宮社の例祭。
1792(寛政4)年5月15日、今から223年前にこの地区を大津波が襲った。民家約20戸が流出し残った家はわずか5~6軒だった。その時、同神社氏子たちが隣人同士助け合い施し合って水難を克服した。それ以来、過去の大災害の教訓を忘れないように戒め、犠牲者の供養と再び災害が起こらないようにと祈っている。
祭典終了後、宮司たちは同神社の前にある竜宮浜に移動し、みこが膝まで海に漬かり「キュウリ(野菜)」「ナス(同)」「ミル(海草)」「マツナ(海浜性植物)」の供物を約80センチの木舟に載せて海に流す風習が行われる。
供物には、子どもから大人まで理解できるように語呂合わせで「(大津波を)急に(キュウリ)、見るな(ミルナ)、待つな(マツナ)」の意味を掛けている。
同町の江(え)地区に住む女性は喪服姿で参列し「毎年津波の被害を忘れないようにお参りに来ているが、孫の世代にまで伝わっているかはわからないし不安。あらためて後世に伝えなければいけない」と気を引き締めた。