天照大御神(あまてらすおおみかみ)の衣を織り始める「神御衣奉織始祭(かんみそほうしょくはじめさい)」が5月1日、伊勢神宮内宮(ないくう)所管社の「神服織機殿神社(かんはとりはたどのじんじゃ)」(松阪市大垣内町)と「神麻続機殿神社(かんおみはたどのじんじゃ)」(同井口中町)で行われた。
毎年5月と10月の2回、神服織機殿神社では女性の織子(おりこ)が和妙(にぎたえ)と呼ぶ「絹」を、神麻続機殿神社では男性の織子が荒妙(あらたえ)と呼ぶ「麻」を毎朝8時から夕方まで織り、13日の「神御衣奉織鎮謝祭」を経て、5月14日と10月14日に内宮の正宮と荒祭宮で行われる「神御衣祭(かんみそさい)」に奉納する。天照大御神の衣を「神御衣(かんみそ)」と呼ぶ。
この日は、女性4人と男性4人の織子と神職らが祭神に神饌(しんせん)をささげ、「清く麗しく奉職できますように」と祈念した。その後、八尋殿(やひろどの)でも同様の祭典を行い、殿内に絹と麻の原料が運び込まれた。
伊勢神宮の中でも神嘗祭(かんなめさい)と共に「神祇令」「延喜式」「皇太神宮儀式帳」にも記される由緒ある同祭。戦国時代には一時荒廃するが、京都や和歌山の織物業者が講をつくって再興させた。繊維・アパレル業界の人たちが同祭の日に合わせて参拝に来ていたこともあったが、今はない。
静かな鎮守の杜に機織りの音色が「タントンタントン」と響きわたる。