南伊勢町の南島東小学校(贄浦)と南島西小学校(村山)の児童24人が9月5日、平家の塩作りや「伊勢まぐろ」のエサやり体験プログラムに参加した。
同町の旧南島地区には、大方竈(おおかたがま)、小方竈(おがたがま)、新桑竈(さらくわがま)、棚橋竈(たなはしがま)、栃木竈(とちのきがま)、道行竈(みちゆくがま)と7つの「竃(かま)」の文字が付く地名が残る。竃は塩を焼いた場所を指し、紀伊山地の山奥に隠れ住んだ平維盛(たいらのこれもり)の子・行弘(ゆきひろ)の子孫・行盛(ゆきもり)が、一族を引き連れこの地にたどり着き、生計を立てるために塩を焼きながら住み着いたとされる。1854(安政元)年の津波で流されて廃村となった赤崎竈(あかさきがま)を入れて「南島八ヶ竃(なんとうはつかかま)」と呼ばれている。毎年1月5日に当番制で「八ヶ竃八幡祭り」が行われている。
南伊勢町の神前浦で育てられている「伊勢まぐろ」は、「三重県漁業協同組合連合会(みえぎょれん)」(津市)が中心となってブランド化に成功した養殖クロマグロ。国内クロマグロ養殖場の中でも最北東に位置し、沖縄などで養殖するマグロと比べ、水温が低いためじっくりと育てることでより天然に近い肉質に仕上がるという。
同プログラムは地元の子どもたちに、海水から塩ができることを学び、平家の武士たちがどのような思いで塩を作りこの地に移り住んだかを感じること。魚の養殖とは何か?「伊勢まぐろ」がどのような環境でどのような餌を食べているかなどを子どもたちに伝えようと、南伊勢町神前浦地区振興産地協議会・神前浦交流体験部会が2011年の秋から始めた事業。
伊勢まぐろへの餌やりでは前日に取れたサバを生簀の中に放り投げマグロが食べる様子を観察したり、生魚と生魚と粉末配合飼料を混ぜてミンチ状にしたモイストペレットの違いなどを学んだ。現場で児童たちは「1日どれくらいの量の餌を食べるか?(約4キロ30匹のサバを食べる)」「どれくらいの大きさになるか?(35~40キロになるまで育てる)」「1日どれくらいの餌が必要か?(現在9台の生簀(いけす)で養殖しているので約30トンの餌が必要)」「最初はどれくらいの大きさのマグロか?(漁師から約15センチ100グラム以下の生きた幼魚を買って育てている)」など多くの質問が寄せられた。
塩作りでは、土鍋に海水を入れ時間を掛けて煮詰める作業を体験した。児童たちは汗をかきながら少しずつ土鍋の周りが白くなってやがてドロドロになって普段見る塩に成るのを体験。「面白かった」「暑かった」「意外と時間が掛かって大変だった」と言葉にした。
同部会のメンバーで仙宮神社(河内)宮司の加藤實(みのる)さんは「我々の祖先がこの地で塩を作ったということを知ってもらいたかった。塩作りや餌やりを体験した子どもたちが大きくなってm地元で塩作りや漁業者になってくれればうれしい」と話す。