旧暦の5月15日に当たる6月9日、二見興玉神社(伊勢市二見町)の境内社「竜宮社」で、同社の例大祭と津波の教訓を後世に伝える祭典「郷中施(ごじゅうせ)」が行われた。
【その他の画像】逆さ虹、環水平アーク、竜宮社の目の前の空に出現
1792(寛政4)年5月15日に同地区を大津波が襲い、民家約20戸が流出。残った家はわずか5~6軒で、同神社氏子たちが隣人同士助け合い施し合って水難を克服したことから同祭は「郷中施」といわれるようになった。以来、過去の大災害の教訓を忘れないように戒め、犠牲者の供養と再び災害が起こらないように祈っている。祭典では、昭和天皇の御製「天地(あめつち)の 神にぞいのる朝なぎの 海のごとくに 波たたぬ世を」を拝誦(はいしょう)し、みこが「浦安の舞」を舞った。
祭典終了後、宮司たちは同神社の前にある竜宮浜に移動し、みこが膝まで海に漬かり「キュウリ(野菜)」「ナス(同)」「ミル(海草)」「マツナ(海浜性植物)」の供物を約80センチの木舟に載せて海に流した。供物には、子どもから大人まで理解できるように語呂合わせで「(大津波を)急に(キュウリ)、見るな(ミルナ)、待つな(マツナ)」の意味を掛けている。
一方、同祭典斎行中の東の上空に、「水平の虹」が浮かんでいるように見える「環水平アーク」という珍しい自然現象が起こった。
志摩市在住で環境省自然公園指導員や星空観察会のナビゲーターなどを務め、自然現象に詳しい宮本秀明さんは「『逆さ虹』ともいわれる大気光学現象『環水平アーク』を観測。環水平アークは、夏場の正午前後、地平線近くにほぼ水平の虹が見える現象。上空の雲に含まれる氷の結晶に太陽の光が屈折することによって起こる。太陽高度が58度以上、薄い雲がかかっているなどの条件が重なった時に『奇跡』が起きる。梅雨の晴れ間の奇跡は、15分ほどで空に溶けるように消えていった」と説明する。「『環天頂アーク』は日没直前に一度だけ見たことあるが、環水平アークは初めて」とも。
今年5月26日に同神社宮司に就任したばかりの金子清郎さんは「虹は竜の一種、化身だと言われるので、祭典中に虹が出るとは…。龍神様に『よしわかった』とお認めいただいたのだと思う」と感慨深げに話す。