「地域」に光を当てた映画を一堂に集めた「賢島映画祭」が9月3日、「賢島宝生苑(ほうじょうえん)」(志摩市阿児町)で開催され、「Sun Flower 向日葵(ひまわり)」がグランプリ作品に選ばれた。
今年で3回目を迎えた同映画祭の合言葉は「賢者(けんじゃ)が島にやってくる」。主催は「志摩ムービークルーズ」(志摩市大王町)。昨年開催されたG7伊勢志摩サミットで議長国記者会見場となった同会場で、朝9時からエントリー6作品を上映した。今年から一般客も招待して行われた。
審査の結果、「Sun Flower 向日葵」がグランプリを受賞。同作は、東日本大震災から150日後の架空の街「静岡県・北伊豆市」で温泉旅館を営む祖母・景子(片山万由美さん)の家に疎開する東北の少女・朱美(齊藤朱海さん)を通して、被災地や現在日本が抱える社会問題などを描く内容。朱美は、ヒマワリは放射能を吸うとかたくなに信じ持ち歩いている。準グランプリには、瀬戸内海に浮かぶ小さな島「粟島」「志々島」を舞台に日中共同スタッフ・キャストで制作する「チンゲンサイの夏休み」が選ばれた。
今年の各受賞作は、グランプリ=「Sun Flower 向日葵」(木内一裕監督)、準グランプリ=「チンゲンサイの夏休み」(翁志文監督)、特別賞=「台湾奇想曲」(飛田一樹監督)、主演男優賞=時光陸さん(海に行くつもりじゃなかった)、主演女優賞=向有美さん(台湾奇想曲~Taiwan Capriccio~)、助演男優賞=中野誠也さん(Sun Flower 向日葵)、助演女優賞=片山万由美さん(Sun Flower 向日葵)。
映画監督の宇井孝司さんは「自分も作る方の人間なので審査するよりもされる方がいい。6作品とも作品への思い、地域へ思いがこもって素晴らしい物ばかりだったので審査も真剣にさせていただいた。撮影技術などについてはそれほど審査対象としていないが、思いを込めれば込めるほど、録音や音楽や脚本など『技術』が大切であることを感じさせてもらった」と評価する。
同会代表の橋爪吉生さんは「母校が無くなる2013年、喪失感でいっぱいだったが『校歌の卒業式』という地域主役型映画を作ったことがきっかけで、町に元気が生まれ、喪失感どころか未来への希望に変わっていった。そのことがきっかけで『地域主役型映画』の普及を全国、世界に広げようと思ったのが映画祭開催のきっかけ。映画製作を通して地域を巻き込み、地域をさらに元気にしていってほしい」と話す。
同映画祭への応募条件は、「主役クラスのキャストが最低1人その地域の人であること」「本編が30分以上であること」など。映画としての技術的な完成度よりも撮影した地域・人々をどれだけ魅力的に映しているか、どれだけ地域を巻き込んでいるかなどが審査対象となる。