志摩市の立神地区に伝わる「ひっぽろ神事」が1月2日昼から満月の夜にかけて、宇気比神社(志摩市阿児町)の境内で行われた。
同祭は一年の豊作を祈願する神事で、今年60歳還暦と42歳厄年を迎える男性がトリの座(客側)に、祷屋(とうや)と「ハゼの若衆」と呼ばれるハゼの座(接待側)に付く。五穀豊穣を祈る獅子(しし)が獅子殿から境内に出て舞い、宴会、豊年竿の舞、小屋破り、火祭りなどが行われ、その間に一番起こしから九番起こしまで9回繰り返す。「ハゼ申ーす」「おう」「ぱっぱの火をどんどん持たっしゃれ」「当年のお神酒(おみき)は西井戸(の水)が多過ぎでござる」「当年の御神酒は、上出来でござる」と昔ながらのやり取りが客側と接待側で繰り返される。祭りのクライマックスには、小屋を壊してムシロや稲ワラを燃やし、それを客側が消したりを繰り返す。ひっぽろ神事のひっぽろは楽師が奏でる横笛の音が「ヒッポロ、ヒッポロ」と聞こえることからついたと言われている。
今年79歳の番条宏幸さんは「この祭りは昔は1日と4日5日の3日間行っていたが、社会環境の変化により、若手の担い手がいなくなり、1日と3日の2日間に祭典を減らし、さらに現在は2日だけにした。それでも祭りに参加してくれる人が減り、今後存続の危機になるかもしれない」と危機感を募らせる。
文化庁は、重要無形民俗文化財以外の無形の民俗文化財の保護も積極的に行っている。特に変容・衰退の恐れが高いものについて計画的に映像・報告書により記録化を進め確実な記録保存を図っている。