ホテル近鉄アクアヴィラ伊勢志摩(志摩市大王町)で5月19日・20日、「干潟・海辺の再生とまちづくり国際シンポジウム」が行われた。
【その他の画像】「干潟・海辺の再生とまちづくり国際シンポジウム」
人と自然の調和を目指す志摩市の「里海創生」を中心としたまちづくりの事例、海外の防災・環境保全、漁業振興などを融合させた事例などから、将来の再生活動とまちづくりの可能性や課題について考えようと、英国やマレーシアなど国内外の専門家らを集めて開かれたる同シンポジウム。
主催は、立命館アジア太平洋大学環境・開発分野山下博美研究室、北海道大学科学技術コミュニケーション研究室。
山下さんは「干潟は、地球の腎臓(水質浄化)、水の熱帯雨林(生物多様性)、海の子宮(稚魚の生育場所)、渡り鳥のレストラン(中継地点)、家族の憩いの場(レジャー、アサリ掘りなど)、津波のスポンジ(津波の強度・速度の緩衝)、岸のばんそうこう(沿岸域の崩れを防止)、地球温暖化への保険(激しい天候変化や海面上昇のバッファーゾーン)などの役割を持つと言われている」と干潟の重要性を分かりやすく形容し、再生することの意義を訴えた。
講演会では、英虞湾の干潟再生に取り組んでいる同ホテルの宿泊支配人・中西幸光さんがホテル前堤防の水門を開放し、干潟を再生し、干潟をフィールドとした観察会を宿泊客と共に実施した事例を、志摩市役所里海推進室室長の浦中秀人さんが18年前に地域の真珠養殖業者らが海をきれいにしようと取り組んだことが始まり。と志摩市の干潟再生事業の経緯などをそれぞれ説明した。
世界中で400件以上の湿地プロジェクトを手掛け、ラムサール条約科学技術検討委員会委員でRM湿地環境コンサルタント代表のロブ・マクイネスさんは「世界の沿岸部の湿地帯は脅威にさらされている。1900年から63%の湿地帯が破壊され消失した。21世紀に入ってからはその消失スピードは4.2倍になっている。特にアジアで消失率が高い」と警告した。
野鳥湿地トラスト(WWT)、英国スティアート沿岸湿地事業代表のティム・マクグラスさんは「関心の低い人にどのようにアプローチをしたらいいか?」と会場からの質問に対して「干潟周辺と都市部の気温などを比べると干潟のある沿岸部のほうが過ごしやすいことなどわかりやすい事例を紹介すること(環境教育)と同時に難しい問題に対しても後回しにせず丁寧に説明していくことが大切」と解答した。そのほか、マレーシア自然保護協会、自然保護室室長のバル・ペルマルさんや北海道大学高等教育推進機構准教授の三上直之さんらが発表を行った。
参加者は志摩市内の干潟再生が行われている現地や英虞湾の視察を行った。