伊勢神宮内宮(ないくう)神苑の特設舞台で9月24日、中秋の名月を愛でる「神宮観月会」が開かれた。
毎年外宮(げくう)の勾玉(まがたま)池奉納舞台で行われているが、今年は「せんぐう館」(伊勢市豊川町)が休館中のため内宮で行われた。内宮での観月会は2010年、2011年以来の3回目.
神宮観月会は、1898(明治31)年に冷泉為紀(れいぜいためもと)神宮大宮司が伝えた冷泉流の作法に基づき神宮皇学館の学生が中秋の名月にあわせて校庭で和歌を詠んでいた催しを、1948(昭和23)年に外宮勾玉池で神宮観月会として行ったのが始まりで、毎年全国から寄せられた献詠の和歌と俳句の秀作を披講し、雅楽の管絃(かんげん)と舞楽(ぶがく)を披露する。
今年の題目は「父」または「母」。表彰式の後、全国から応募のあった短歌と俳句の秀作を伊勢神宮の楽師が古式により読み上げた。短歌は、浄衣(じょうえ)を着けた7人の歌人が冷泉流の作法に基づき読み上げ、俳句は、1人の講師(こうじ)が短冊に書かれた俳句を読み上げた。
最優秀賞となる特選には、千葉県の鈴木みつ子さんの「桃さくら あんず花咲き 亡き母の ふるさとはいま 花の曼荼羅(まんだら)」の短歌が、群馬県の鈴木百合子さんの「ちちの面 ははの面とも 今日の月」の俳句がそれぞれ選ばれた。
選者の岡野弘彦さんは「九十(ここのそ)ぢ なかばの齢(よわい) わが生きて いよいよ恋(こ)ほしき ちちははのうへ」、鷹羽狩行(たかはしゅぎょう)さんは「父にやや 遅れて母の 流れ星」と詠んだ。
雅楽は、管絃「胡飲酒(こんじゅ)」と舞楽「納曽利(なそり)」がそれぞれ披露された。観月会開催中、中秋の名月は、雲はあったものの、その雲の合間から美しい月が見え隠れしていた。この日は、約350人の観客が雅な世界に酔いしれていた。