環境省中部地方環境事務所(愛知県名古屋市)が2月16日、伊勢志摩国立公園から外来植物を駆除するための作業プログラム「南伊勢町押渕湿地の外来植物駆除作戦」を度会郡南伊勢町押渕(おしぶち)の湿地で行い、約30人が参加した。
「押渕湿地」(約6ヘクタール)は60年以上前まで水田として稲作が行われていたが、沼地であることから放棄地となりヨシが多く育った。20年前くらいから、ハンノキなどが自生し、そのまま多様な生態系を維持しながら現在に至っている。環境省のレッドデータブック絶滅危惧1B類のゴマシオホシクサや2類のヒメコウホネ、ミズトラノオなども生息し、生物多様性が非常に高い県内有数の湿地となっている。
その湿地にいつの間にか持ち込まれた外来植物のホテイアオイやコカナダモなどが繁殖し生態系を乱していることから、今回の作業ではホテイアオイを駆除し、広く外来生物問題の実態や生態系に与える影響、地域の自然環境について理解してもらうことを目的にプログラムを実施した。
ホテイアオイは漢字で「布袋葵」と書くことから日本原産の植物だと勘違いされることが多いが、実際には南アメリカ原産の外来種(学名Eichhornia crassipes)。水面に浮かんで生育し、ウオーターヒヤシンスとも呼び青く美しい花が咲くことからホームセンターなどでも今も販売されている。現在もまだ特定外来生物には指定されていない。
参加者は泥だらけになりながらホテイアオイを泥の中から引き抜き、その後手分けしてコンテナに入れ運び、泥を取り除いてビニール袋に入れ、軽トラック1台分を駆除した。参加者の中には泥の中に足を取られて抜けないで助けを求める人や顔に泥を浴びる人もいたが、安全に作業は終了した。
志摩自然保護官事務所(志摩市阿児町)国立公園保護管理企画官の内田清隆さんは「今回駆除したホテイアオイも最初は小さなものだったと思う。外来種であることを認識しそれを自然の中に放つことがどうなっていくかを深く理解してほしい。今日の作業後の様子も観察していくことができれば」と話す。
同事務所では5月に、「道の駅 伊勢志摩」(志摩市磯部町)付近の北アメリカ原産の外来植物「オオキンケイギク」の駆除を予定する。