伊勢神宮は5月22日・23日、伊勢市内に住む今年度80歳以上(1941(昭和16)年4月1日以前生まれ)の高齢者を招待し、長寿と健康を祈願する「延寿大々神楽(えんじゅだいだいかぐら)」を神楽殿で行っている。
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今年の対象者は、1万6321人。この数字は伊勢市に隣接する自治体の度会町、玉城町、南伊勢町、多気町の人口よりも多く、昨年の1万5989人よりも332人増加した。
対象者には、お守り、紋菓、湯飲みの記念品がプレゼントされ、今年度80歳になる1941(昭和16)年生まれの高齢者1504人(昨年は1362人)には、伊勢神宮御用材のヒノキでできた延寿杖(えんじゅつえ)が贈られる。長さ約120センチの延寿杖には、神宮司庁職員が1本1本丁寧に押した「神宮」の文字の焼き印が押され、陶器製の湯飲みには、亀田幸弘少宮司が揮毫(きごう)した「百福(ももふく)」の文字が添えられていた。
この日、内宮(ないくう)神楽殿では「倭舞(やまとまい)」「人長舞(にんじょうまい)」「納曽利(なそり)」の神楽が奉奏され、長寿を祈願した。500人収容可能な神楽殿には、背中の曲がった人はほとんど見られず、かくしゃくとした高齢者であふれ返っていた。
延寿杖を手に取った女性は、ヒノキの香りに「いい香り…」と思わずつぶやき笑みを浮かべ、今年で3回目の湯飲みを手にしたという女性は「あと何個この湯飲みをいただけるだろうか…」と友人たちと談笑していた。宇治橋から神楽殿までの距離は往復で約1.2キロ、正宮まで参拝し往復すると約1.7キロになる。白い伊勢神宮の紙袋を手にした人たちは、直会(なおらい)のお神酒(みき)をいただいた後も元気よく歩いて帰って行った。
「神領民(しんりょうみん)」と呼ぶかつて神宮の領地内で生活していた住民(現在は伊勢市内に住む人々のことをいう)は、20年に一度開催される式年遷宮で使う木材を運ぶ行事「お木曳き(おきひき)」や白石を集め敷地内に敷き詰める「お白石持ち(おしらいしもち)」などの行事に積極的に奉仕する。今年で71回を数える延寿大々神楽は、神領民のその奉仕への感謝の気持ちとして戦後の1949(昭和24)年から毎年続けられている。
今年の最高齢者は、22日が1914(大正3)年4月11日生まれ106歳の村田さとさん(倭町)、23日が明治・大正・昭和・令和の4つの時代を過ごす1912(明治45)年1月30日生まれ108歳の森スミ子さん(小俣町)。