「えっ、ここで遊んでもいいの?」「家の中にも入っていいの?」と子どもたちが恐る恐る遊び始める「公園」が、志摩市浜島町南張に作られている。
「公園」は、鈴鹿市在住の澤村共一さん所有の約100坪の土地と築90年以上の約25坪の家を子どもたちの遊び場にと開放しているもの。ブランコや滑り台、シーソーなどの遊具があるほか、新たに樹木や花を植え庭園管理も行き届く。コンクリート壁の建物の中は畳を全て取り除き、パステルカラーに塗ったむき出しの柱をアスレチック遊具に変えた。知らなければ、外観からは庭のきれいな普通の民家にしか見えない。
澤村さんは、ホンダなど自動車メーカーの試作車開発に関わるプレス加工製作会社「共新製作所」(鈴鹿市)の社長で、廃校となった南張小学校(同)に4年・10歳まで通った。「公園」は澤村さんが幼少期に生まれ育った実家。
澤村さんは、4年前まで実家を人に貸していたが、ある時雑草が生え放題となって荒れていることを知り、「これはいけない」と、土曜・日曜の休日を利用して庭の掃除のために鈴鹿から通い出した。「作業をしていると近所の子どもたちから『こんにちは』とあいさつされるようになった。子どもたちのためにブランコを作ったら、遊んでくれるようになって、ある時、『滑り台は無いの?』と聞かれリクエストに応えて遊具を設置した。子どもたちに喜んでもらえることでもっと何かをしてあげたいと思い、楽しくなって、はまってしまった(笑)。家の方も家具などいろいろなものがあったが全て処分して遊び場に開放した」と話す。
「公園」の出入りは自由で、家も鍵は掛けていない。子どもたちからは、澤村さんは「キョーイチさん」、「公園」は「コーエン」と呼ばれている。
澤村さんは「子どもたちには電気は消していけよと言っているが、特にこれをしてはだめなどというルールは何も決めていない。子どもたちを観察していると、しっかりと自分たちで決めごとをするなどしながら仲良く楽しく遊んでいる。それでいい」とほほ笑む。
一度遊びに来たことがあるという子は「以前来た時、お庭のシーソーやブランコが楽しかった。お家にも入っていいことを今日初めて知った。外から見ると古いお家なのに、中に入ると秘密基地のよう。学校でも行ってみたいとうわさになっている」と打ち明ける。同伴する母親は「小学校が統合されて近所に遊べる場所が無くなっていたので、とても有難い」と恐縮する。
澤村さんは、「少子化も影響するが、子どもたちが自由に遊べる場所が少なくなっている。生まれて育てていただいた故郷で暮らす子どもたちに喜んでいただけるなら」と今日も「コーエン」作りに精を出す。