イチゴ栽培農家の倉野佳典さんが12月1日、伊勢市の農園の隣に直売所「伊勢苺園(伊勢ストロベリーランド)」(伊勢市小俣町)をオープンした。
赤いメガネに、イチゴのニット帽、赤い靴には緑の紐といった毎日イチゴカラーの倉野さんは脱サラし、2011(平成23)年4月にイチゴ栽培のみで新規就農。三重県が開発したイチゴ品種「かおり野」をメインに12棟(約30アール)のハウスを管理し栽培する。
「かおり野」は、三重県農業研究所(松阪市嬉野町)が約20年間研究開発し2010(平成22)年5月に品種登録したイチゴ。倉野さんによると、「かおり野」は酸味が少なく、甘い香気成分「リナロール」を多く含むため香りがよく、ジューシーで爽やかな甘さが特徴という。「たんそ病などの病気に強く、収量が多く、実が大きく、11月中旬から5月上旬まで収穫できる」とも。
倉野さんは「知識も経験も土地も資金もない状態からスタートし、今年9年目を迎えた。JA伊勢(度会郡度会町)イチゴ部会長の西村章さんに弟子入り、何も分からないところから教えていただいた。『1年でも早く就農した方がいい。50年やっても50回しか栽培できないのだから』と背中を押されて独立した」と話す。
倉野さんの育てた「かおり野」は今年2月23日、一般社団法人日本有機農業普及協会(長野県伊那市)が主催する「オーガニック・エコ・フェスタ2019」の糖度・抗酸化力・ビタミンC・硝酸イオン・食味の5項目を評価する「栄養価コンテスト」イチゴ部門で、抗酸化力1位、糖度とビタミンC2位、総合1位で最優秀賞を受賞した。「イチゴ栽培ではルーキーの倉野さんが、技術力が必要なイチゴ部門でこの成績とは驚き。まさに快挙」と評価された。
倉野さんは「2014(平成26)年の2月に降った大雪でハウスがつぶれ大きな被害を受け、廃業も考えたが、多くの人に励まされ支えていただき今に至っている。ほかとは違う価値のあるイチゴを目指して、土壌診断を行い、細かなミネラル分まで数値化。カルシウムやマグネシウム、鉄や亜鉛、マンガンなどの細かな微量ミネラルまで与え、しっかりとした味のイチゴ作りを追求した結果、評価されたことがとてもうれしかった。続けてよかった」と振り返る。
倉野さんは今年から、三重県、香川県、千葉県、九州沖縄農業研究センターが共同開発し2017(平成29)年品種登録の「よつぼし」の栽培も始めた。「直売所は少しでも多くの人に自分の作るイチゴを食べてもらいたいとの思いから開設。おいしいと思って食べていただけるイチゴを作り、イチゴを食べた人に幸せになってもらいたい。イチゴ狩りも計画している」と目を輝かせる。
営業時間はイチゴ摘み取り開始から売り切れまで。