海上自衛隊が2月1日~10日、松阪港(松阪市)から約13キロ沖の伊勢湾内で大規模機雷除去(機雷戦)訓練を行っている。
海上自衛隊の機雷戦能力の維持・向上を目的に毎年この時期に行っている同訓練。今回は、米国海軍との連携強化を図ることを目的にした初の日米合同訓練も兼ねている。訓練統制官は、掃海隊群司令部幕僚長の渡邉浩1等海佐と米国海軍第5機動水中処分隊第501小隊指揮官。
令和元年度の同訓練には、海上自衛隊の艦艇20隻(掃海母艦1隻、掃海艦艇16隻、掃海管制艇2隻、輸送艦1隻)、航空機2機(MCH-101)と米国海軍の水中処分員約10人が参加。昨年は16隻が参加した。陸上自衛隊の水陸両用車(AAV7)3両による測定支援も行う。
6日は、報道陣に訓練が公開され、報道陣は「世界最大のFRP船」と呼ばれる、海上自衛隊の最新掃海艦「ひらど」(母港=横須賀)に乗船した。掃海母艦「ぶんご」にも乗船する予定だったが風が強くうねりがあったため、この日は終日「ひらど」内での公開訓練となった。「ひらど」は全長67メートル、幅11メートル、深さ5.2メートル、基準排水量690トン、ディーゼル2基2軸、馬力1100PS、速力14ノット、20ミリ遠隔管制機関砲を装備。
光ファイバーケーブルでつながれ、水中カメラと機雷探知機(ソーナー)の付いた最新鋭の自走式機雷処分用弾薬「EMD(Expendable Mine Disposal System)」は、海底の深いところにある機雷を捜索し爆破できる装置で、この日は「EMD」を浸水させるまでの手順を行った。
白波立つ荒波の中、あらかじめ海上に設置した訓練用の機雷に爆発物処理班(EOD)がボートで近づき、爆薬を取り付ける訓練も行われた。
潜水時間3000時間以上という沖縄県出身で潜水し機雷を処理する爆発物処理班で「ぶんご」乗組員の須田達也さんは「伊勢湾の深さ25~30メートル。海底ではほとんど光が入らないので真っ暗。湾の中なので潮の流れはほぼ無いが今日のような強風で荒波の状況では訓練も厳しい。今回のEODの任務は最新の『ひらど』の装備品検査も兼ねているため、訓練用の機雷を指定した場所に適切に設置しなければならないこと」と話す。「沖縄の海域周辺にはまだまだ不発弾などがあり、今でも水中処分班が任務を遂行している。自分は沖縄出身なので、近い将来沖縄の海の安全のために自分が関わることができたら有り難い。今は与えられた任務を全うするだけ」とも。
「機雷」は、機械水雷の略で、船が接触するだけで爆発する触発機雷、船の磁気や音、水圧などに感知し爆発する感応機雷などの種類に、それぞれ海面、海中、海底型があり、敵国の海域に敷設したり防衛のため自国領土の海域に敷設したりする兵器のこと。
「掃海艦」「掃海艇」は、安全な航路確保を目的に機雷を除去するために作られた船で、感応機雷が感知しないように木やFRP製の船体、磁気を帯びないようにアルミ合金などを使ったエンジン、静音性のある電気モーターなどでできている。
1991(平成3)年6月5日~9月11日、自衛隊初の海外派遣活動として湾岸戦争後の国際連合平和維持活動(PKO)で「ペルシャ湾派遣掃海部隊」が編成され、掃海母艦「はやせ」、補給艦「ときわ」、掃海艇「ひこしま」「ゆりしま」「あわしま」「さくしま」が、34個の機雷処分を行い、国際貢献した。