老舗海鮮問屋「山金商店」(度会郡南伊勢町、TEL 0599-69-2390)の水槽の中に現在、1匹で1キロ以上の重さの特大伊勢エビが大切にストックされている。
【その他の画像】太宰府天満宮の「初天神祭」で神饌となる麻ひもで結ばれた特大伊勢エビ
1946(昭和21)年創業の同店。かつて「遠洋漁業の町」として栄えた宿田曽地区で、主に伊勢エビの卸、小売りをメインに鮮魚や貝類、干物などを販売する。
店主の山本和博さんは1947(昭和22)年生まれの73歳、同店3代目。山本さんの祖父・金次郎さんが創業し、山本さんは2代目の父・喜久蔵さんの下で学び、18歳から今の仕事に就く。現在、山本さんの娘の夫・大西秀樹さんが4代目に成るべく山本さんの下で修業中。
山本さんは、毎年10月1日に伊勢エビ漁が解禁され入札が始まると、1キロ前後の特大サイズの伊勢エビを優先して入札するという。今シーズンの初入札は10月6日だったが、現在まで何度も特大伊勢エビを落札する。サイズが大きく、角や足が欠けていないベストコンディションの伊勢エビを仕入れて水槽にストックするために、何度も入札を行い、サイズアップかつ最良の特大伊勢エビの更新を重ねている。
その理由を山本さんは「2014(平成26)年1月、太宰府天満宮(福岡県太宰府市)さんから『一番大きな伊勢エビを送ってほしい』と直接ご注文をいただいた。それ以来毎年1月にご注文をいただけるようになり、一番大きくて一番いい物をお届けしなくてはと、在庫を切らさないように、大切に扱うようにしている」と話す。
太宰府天満宮の企画広報部担当者は「当宮の御祭神は天神さま(菅原道真公)であり、神様へのささげ物・神饌(しんせん)として、なかなか手に入らない、珍しい、より良きものをと思い、お願いしている。天神さまの誕生日が6月25日、命日が2月25日ということで『25』の数字にご縁があることから、当宮では毎月25日に祭典を斎行している。1月25日は年の初めということで『初天神祭』、12月25日は年の最後なので『納天神祭』と呼び、『初天神祭』は新年正月のお祭りなので、おめでたい伊勢エビを生きたまま麻ひもで結んで祭壇にお供えしている」と説明する。
同担当者は「三重県に行く機会があった祭事神饌担当者が、縁があり山金商店を訪れた。その時に特大の伊勢エビに出合ったのがきっかけでそれ以来、お願いするようになった。特大伊勢エビは、生きた状態でお供えしているので、祭典中もまだまだ元気で動きも激しく、動かないように麻ひもで結ぶなどの工夫がいる『特別な神饌』。祭典後、約500人の参列者と直会(なおらい)を行い、撤下(てっか)した伊勢エビは、新年の幸福を願って、ほかの神饌と共にお分けしている。もらった人からは、幸せがもらえると非常に喜ばれている」とも。(新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から直会は、例年のような形での実施は行わない予定)
大西さんは「現在、太宰府天満宮さま用にストックしている伊勢エビは1キロを超えたサイズで、角も足も折れていない自信を持ってお届けできる状態だが、これからさらに大きな伊勢エビが水揚げされれば、それに代わる可能性もある。水温管理などを徹底し、最良の伊勢エビを納めさせていただけるようベストを尽くしていきたい」と話す。