二見興玉神社（伊勢市二見町）の飛地境内社「栄野（えいの）神社」（同）で1月14日、「湯立（ゆたて）神事」が行われた。

【その他の画像】煮えたぎる大釜にクマザサを入れて振り回す神事

　第11代垂仁天皇の第四皇女・倭姫命（やまとひめのみこと）が二見の海岸に着船した際、出迎えて堅塩（焼き固めた塩）を献上したとされる「佐見都比古命（さみつひこのみこと）」と、倭姫命が国名を尋ねたときに「速雨の二見国」と答えた「大若子命（おおわくごのみこと）」の2座を祭る同神社。

　例大祭の同日行われた湯立神事は、氏子が前日から神事用に切りそろえたクマザサ50本を1束にした物を計24束用意し、直径約1メートルの大釜（おおがま）で火をたき、井戸からくみ上げた水を煮立て、神職が煮えたぎる釜の中にクマザサを入れ左右左に振り上げ、その熱湯を全身で浴びると、罪けがれがはらい清められ、1年間無病息災で過ごせるとされる神事。同神社神職によると、約200年前から伝わるといわれているが、災害で文献などを喪失しているため詳しい起源は分からない。

　神事では最初に、金子清郎宮司が大釜に入れたクマザサで祭殿や氏子をはらい清め、続いてみこが「煮えたぎる 湯玉の露を自らに 受けて清めよ 身の禍事（まがごと）を」との和歌に合わせ、クマザサを振りながら大釜の周りを2周回る「湯立舞」を行った。その後、同神社の4隅をはらい清めると、神職らが入れ代わり立ち代わり24束のクマザサで、集まった参拝者たちをはらい清めた。

　神職が熱湯に浸したクマザサを勢いよく振ると、白い湯気が弧を描き、参列者の頭や顔に熱湯が掛かった。神事で使ったクマザサには神が宿るといわれ、神棚などに飾ると家族が1年間を無病息災で過ごせるという。

　二見町出身の女性は「湯立神事には毎年欠かさず参列している。今年のクマザサをいただき、神棚にお供えする。おかげさまで風邪も引いたことがない」と話す。鳥羽市出身の家族は「3年前にふと訪れた時に湯立神事を行っていて、それ以来毎年参拝に来るようになった。そういえば病気になっていない」とほほ笑む。

　金子宮司は「皆さまが新型コロナウイルスに感染しないようにお祈りした。自分のこと以外に人のために祈ること。その心を常に思い起こしてほしい。一日も早く疫病を克服し、これまでのような生活に戻り、人々が楽しく仲良くできるよう、今年一年が良い年であるように願う」とあいさつした。

　神事の後は、金子宮司から神事で使ったクマザサをもらおうと列をなす参拝者たちの姿があった。